ストーリーの表と裏
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俺の幼馴染・徹子は変わり者だ。
道ばたで突然見知らぬ人に抱きついたり、
俺が交通事故で入院した時、事故とは全く関係ないのに、なぜか枕元で泣いて謝ったり。
合格間違いなしの志望校に落ちても、ケロッとしている。
徹子は何かを隠してる。
俺は彼女の秘密を探ろうとするが……。
互いを思いやる二人の物語が重なった時、温かな真実が明らかになる。
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このストーリー、主人公は平石徹子と言うべきなのでしょう。
どこか変わっている女の子。
でも本作は2部構成になっていまして、
始めの「フラット」は彼女の幼なじみ、森野護(まもる)が語り手となっています。
2人は家が近所で、幼稚園から中学校までが一緒という幼なじみ。
護くんは「始めからことわっておくけれど、これは愛とか恋とか、
好きだとか惚れたとか言う話では全然ない」と言っています。
まあ、それは聞き流すくらいにしておいて、
護から見たちょっと変だけど、実はとてもイカす女の子、
徹子の様々なエピソードが語られて行きます。
護は体は大きくて、高校・大学と柔道部の猛者。
そして気持ちは優しく、なんとも頼りがいのある男子なのであります。
すっかりファンになってしまいます。
そして、始めに豪語したはずなのに、実はやっぱり護は徹子のことを思っていて、
なんだかいい感じになるのかも・・・?と思った矢先、
突然徹子が連絡を絶って、
「結婚するらしい」ということをウワサで聞くことになるのです。
え~、なんで~と思ったら第一章はそこで突然途切れて、
2部「レリーフ」では今度は徹子が語り手となります。
同じ出来事を男女が自分目線で別々に語る。
まあ、そういう小説は他にもありますよね。
しかしここで驚くのは、この徹子の事情です。
彼女はある重大な秘密を抱えていた!
前半まではごく普通の青春ストーリーと見えていたのですが、
さすが加納朋子さんのストーリー、そう一筋縄ではなかった。
SF的というかファンタジー的というか、
まあ、リアルな生活の物語からは外れてしまうわけですが、そこがまた面白い所なのです。
一体どうして、徹子が別の男と結婚しようと思うようになったのか、
そのナゾに向かってまっしぐらにストーリーは駆け抜けていきます。
裏と表のストーリー。
ともかく楽しめました。
「いつかの岸辺に跳ねていく」加納朋子 幻冬舎文庫
満足度★★★★.5
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