映画と本の『たんぽぽ館』

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フォーリング 50年間の想い出

2021年11月27日 | 映画(は行)

全く受け入れ難かった父と

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ビゴ・モーテンセンの自身の親子関係を反映させた半自伝的脚本を用い、
自身で初監督を務めた作品。

 

航空機のパイロットであるジョン(ビゴ・モーテンセン)は、
同性パートナーのエリック(テリー・チェン)と、
養女モニカと3人でロサンゼルスに暮しています。

そこへ田舎で農場を経営するジョンの父親がやって来ます。
父ウィリス(ランス・ヘンリクセン)は認知症となり、農場経営も一人暮らしも辛くなったため、
引退後に住む家を探すためにやって来たのです。

思春期の頃から父との間に心のミゾがあったジョン。
認知症で過去や現在の出来事が混濁する父と向き合ううちに、
父子の50年間の記憶が蘇るのでした・・・。

ウィリスは典型的な保守的な父親なのです。
強権的で、母の言うことに耳を傾けようとしない。
どこでもタバコを吸い、言うことが下品で口汚い。
ジョンは幼かった頃をのぞいては、いつも父が嫌いでした。

そんな父は年をとるとさらに頑固になり、
おまけに認知症でほとんど手がつけられない感じ。
男性同士で結婚している息子を、未だに受け入れがたく思っていることを隠そうともしない。
でも、認知症だからということで、ジョンは父親の言動にはかなり我慢をして
冷静に対応しようと努めています。
しかし、あまりにもひどく言われてしまい、
ついに堪忍袋の緒が切れて爆発してしまうシーは、なかなか圧巻でした。

けれど、50年間の父との出来事を少しずつ思い出すジョン。
当時は何もかもイヤだった父の言動に、
なんだか納得できる部分もあるように思えてくるのですね。
自分も大人になり家庭を持つ今、その時父がどう思っていたのか、
妻や後妻と別れ、自分や妹とも滅多に会わなくなった
最近の父の心境などを想像することはそう難しいことではない。

親子の情というのは実にやっかいなものだけれど、
それでもいつしか寄り添ってしまう、それが親子というものなのかもしれません。

ジョンの子どもの頃の役を務めた少年たちのアゴが
ちゃんと二つに割れていたのは、あっぱれ!

 

<サツゲキにて>

「フォーリング 50年間の想い出」

2020年/カナダ・イギリス/112分

監督・脚本:ビゴ・モーテンセン

出演:ランス・ヘンリクセン、ビゴ・モーテンセン、テリー・チェン、
   スベリル・グドナソン、ローラ・リニー、ハンナ・グロス

 

親子愛度★★★☆☆

いけ好かないオヤジ度★★★★★

満足度★★★.5

 



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