現代音楽に親しむ
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さそうあきらさんの同名音楽漫画の実写映画化。
京都の芸術大学に入学した漆原朔(井ノ脇海)。
ひょんなことから現代音楽研究会に入会します。
彼は子どもの頃からピアノに親しんでいたのですが、
あることから、音楽から遠ざかっていたのです。
なりゆきから不承不承入会したものの、そこには朔が憧れる小夜がいました。
しかし、小夜は朔が音楽から遠ざかる原因となった
異母兄・貴志野大成(山崎育三郎)の恋人でもあるのです。
大成は天才作曲家として世間の注目を浴びる存在。
否応なく朔のコンプレックスが刺激されます。
そんな中、朔は現代音楽研究会の活動を通じて、
一時遠ざかっていた音楽の喜びを取り戻していきます。
朔は子どもの頃からものの形や色が音として頭の中で鳴っていました。
その能力が、現代音楽として表現できることに気づくのです。
本作、京都が舞台というのがステキなのです。
古都、京都と現代音楽。
相容れないようでいて、それは実に良く調和する。
冒頭、いきなり朔は現代音楽研究会の実験的試みに引っ張り込まれて、鴨川へ。
そこで川の上に弦を渡して、川面を響体として弦を共鳴させるのだという・・・。
風任せで自然が奏でる音。
彼らは各々そこに様々な音を重ねていく。
「現代音楽」といったら、なんだか前衛的でとんがったイメージがあって、
あまり親しみを感じる気がしなかったのですが、なるほど、こういうのもアリなのか。
一瞬にして私も、こうした「音楽」のファンになってしまいました。
コミックの原作ではなかなかこういうところまではイメージしにくいのではないかと思います。
映画はいいなあ。
そのまま音が伝わる。
天才として注目を浴びる大成も、
名作曲家といわれる亡き彼の父(石丸幹二)に押しつぶされそうになる
という彼なりの苦悩があります。
その同じ父の愛人の息子である朔にとっても、父は憎しみの対象。
現代音楽という背景の中で、彼らの関係性がどう変化していくのか、
そうしたところが見所です。
朔を見守る形になる凪(松本穂香)ガ、独自の立ち位置で
物語を引っ張っていくのもいい感じです。
原作の勝利ですね。
<WOWOW視聴にて>
「ミュジコフィリア」
2021年/日本/113分
監督:谷口正晃
原作:さそうあきら
出演:井ノ脇海、松本穂香、山崎育三郎、阿部進之介、石丸幹二、濱田マリ
現代音楽の魅力度★★★★☆
満足度★★★★☆
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