映画と本の『たんぽぽ館』

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泣くな赤鬼

2019年06月21日 | 映画(な行)

ピンとこない・・・

* * * * * * * * * *


城南工業高校野球部監督・小渕(堤真一)は日焼けした赤い顔と熱血指導のため、
「赤鬼」と呼ばれていました。
甲子園出場まであと一歩というところまで行きながら、夢破れてしまいます。
そしてそれから10年。
小渕は50代、疲れた中年男となっています。
ある時、病院の待合室でかつての教え子、斎藤(ゴルゴ)(柳楽優弥)と再会します。
ゴルゴは優れた野球センスを持ちながらも努力を怠り、
高校も中退してしまってその後会うこともなかったのです。
今はきちんとした仕事があり妻と幼い子供がいて幸せそうなゴルゴ。
しかし彼は末期がんに冒されていたことがわかります。
赤鬼はそんなゴルゴのためにあることを企画します・・・。



なんだろう、本作はどうも「ピンとこない」のです。
結局何を言いたかったのかよくわからない。
どこが感動点だったのか・・・?


小渕の率いる野球チームに、ゴルゴと同じポジションを競う和田(竜星涼)がいました。
10年後に小渕と再会した和田は言います。

「監督は自分の夢のために俺たちを利用しただけ。
自分はゴルゴを奮起させるためのエサにされただけ。」

私にはまさにこれが真実に思えるのです。
小渕が現任である進学校の弱小野球部には
全く指導する意欲を失っているあたりを見ると・・・。


しかも小渕は、ゴルゴが野球部に復帰することを期待してはいましたが、
戻らない彼が高校もやめると聞いてもそっけなく、
その後の心配をしようともしません。
そして実際その後の彼のことを知ろうともしていなかった。



今考えてみると、本作はこのダメ男が自分のダメさに気づいて再起する物語であったわけです。
ところが、本作はどうもその筋が通っていない、
というかわかりにくくなってしまっている。
それはゴルゴがあまりにもいいヤツで、しかも死に向かうという重大問題を抱えているから。


チームのレギュラーから外されて、高校をやめると言っても
引き止めもしない監督、しかも担任を、普通なら恨むのではないでしょうか。
でもゴルゴにはそういう気配がまったくない。
病院で小渕に会ったときもひたすら懐かしんでいましたもんね。
ひょっとしてこいつバカ?と私などは思ってしまった。
でも現に彼はその時、並の人以上に充実した人生の途上にあったわけだから、
かすかにあったわだかまりのようなものも消えていたのかもしれない。
実のところゴルゴが今、不遇な状況にあってしかも病に冒されていて・・・
そして赤鬼をずっと恨んでいた、ということなら「物語」としてすごく納得できるのですけれど。

なんだかストーリーとしてちぐはぐに思えてしまいます。
しかも小渕が実際にやったことというのがどうにもしょぼい・・・。
名優を揃えながらも、ストーリー自体がしょぼいので、
これはもうどうにもなりません・・・。
え、重松清さん原作? 
じゃ、これを映画化しようとしたことがそもそもの間違い・・・。


<ユナイテッド・シネマにて>
「泣くな赤鬼」
2019年/日本/111分
監督:兼重淳
原作:重松清
出演:堤真一、柳楽優弥、川栄李奈、竜星涼、

満足度★★☆☆☆



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