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「活版印刷三日月堂 空色の冊子」ほしおさなえ

2020年09月15日 | 本(その他)

三日月堂を取り巻く人々が紡ぐ、番外編

 

 

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小さな活版印刷所「三日月堂」。
店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉―。
弓子が幼いころ、初めて活版印刷に触れた思い出。
祖父が三日月堂を閉めるときの話…。
本編で描かれなかった、三日月堂の「過去」が詰まった番外編。

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「活版印刷三日月堂」のシリーズ5巻目。

本作では、これまでの作中でおよそ触れられた、
三日月堂に関わる人々のことをさらに掘り下げたエピソードが語られています。

弓子さんの近況がないのがちょっと残念な、番外編的内容なのですが、
どれも、ほっこりと懐かしくぬくもりがある話ばかり。
語り手もそれぞれで、いろいろな人から見たいろいろな年代の弓子さんを知るのも、
興味深いところです。

今さらではありますが、弓子さんは早くにお母さんを亡くして、
そしてまた、お父さんも亡くなってしまいます。
お父さんと暮らしていたマンションを引き払って、
お父さんの実家である川越の印刷所へ越してくることにする。
でもその時すでにそこに住んでいた祖父母も亡くなっているのです。
天涯孤独。
この引っ越しはかなり切ない。
けれどもこのとき、弓子さんの友人である唯が引っ越しを手伝い、共に過ごしてくれるのです。
ああ、彼女がいてくれてよかった~、しみじみ思ってしまいました。

考えてみればこの物語は、弓子さんの奮闘記ではなくて、
彼女と回りの多くの人々とのつながりが紡いでゆく「活版印刷所」の再生の物語なんですよね。
そういうことを再確認した巻ではありました。

 

<図書館蔵書にて>

「活版印刷三日月堂 空色の冊子」ほしおさなえ ポプラ文庫

満足度★★★.5

 



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