人は自然を支配できる?
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太平洋に浮かぶ美しい島ミクロ・タタに、
泉の守り神である愛くるしい両生類が棲んでいる。
ジョージはその生物に魅入られるが、
隣りの島に移したところ、夥しい数の死体となってしまった。
同じ頃、父や同僚たちが真っ黒で俊敏なトカゲのようなものに襲われ、ショック状態に。
口中に細菌を持っているのだ。
広がり続ける被害。
しかしこれは始まりに過ぎなかった…。
美しい島を襲うバイオハザード。
名手が描く生物パニックミステリー!
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いつもながら、篠田節子さんのゾッとするストーリー。
太平洋の美しい島、ミクロ・タタに、この島固有の愛くるしい両生類ウアブが生息しています。
ジョージ(日米ハーフ)は、このウアブに魅入られブログなどで広めています。
ところがミクロ・タタの開発のため、ウアブの生息している泉がなくなってしまうことに。
そこで、ウアブを近くの島、メガロ・タタへ移すことになります。
メガロ・タタはリゾート地としても開けている比較的大きな島で、
なんとそこのホテルの人工池にウアブを放つことになったのです。
むしろ人工池の方が水も循環させていて、環境も良いだろうということで・・・。
しかし、よかれと思ったにせよ、人が自然の営みに介入するとろくなことにならない。
というのが本作のテーマでありましょう。
なんと、愛くるしいはずのウアブが、思いも寄らない“怪物”に変化してしまうのです。
それは、口中に細菌を持っており、
人が噛まれれば激烈な感染症状を起こし、死に至ります。
しかもその真っ黒なトカゲのような生き物は、とてつもなくタフで、大繁殖を始める・・・。
一体、どのようにこんな事態を収束させようと言うのか、
全くもってハラハラさせられます。
人はしょせん大自然の営みに手出しをすべきではない、
人間は自然を管理なんかできない。
できると思うのは思い上がり。
そしてまた、人が作り出し垂れ流すゴミやら薬品もまた
大いなる大自然への介入になっているわけで・・・。
こんなことの警鐘としては実に雄弁な物語。
この地球上のほんの片隅で発生したある種のウイルスが瞬く間に全世界に広がり、
多大な人の命を奪う・・・、
そんなリアルな現状で、この物語はかなりキツイ!!
「竜と流木」篠田節子 講談社文庫
満足度★★★★☆
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