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「女がそれを食べるとき」 楊逸選 日本ペンクラブ編

2014年05月21日 | 本(恋愛)
「食べ物」よりも、小説の時代的変遷を感じる

女がそれを食べるとき (幻冬舎文庫)
楊 逸,日本ペンクラブ
幻冬舎


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あの人を思うと食べることを忘れる。
彼が欲しい気持ちと同じくらい、食欲が止まらない。
好きな人と共にする食事は、身体を重ねることに似ている
―恋愛と食べることの間には、様々な関係がある。
女性作家の描いた"食と恋"を巡る傑作小説を、芥川賞作家・楊逸が選出。
甘美なため息がこぼれるほど美味なる9篇を味わえる、贅沢なアンソロジー。


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女性作家"食と恋"の小説集、ということで、
この柔らかな水彩のイラスト表紙に心惹かれ、つい手にとってしまったこの本。
うーん、しかしちょっと期待した内容よりもビターです。
もう少しオリーブオイルやハーブ、あるいはスイーツ的なものを期待していましたが・・・。


そもそも著者陣をご覧あれ。
井上荒野、江國香織、よしもとばなな
・・・あたりはおなじみですが、
岡本かの子、幸田文、河野多恵子、田辺聖子と来るとかなりの風格が感じられます。
私はこの本、「食べ物」のことよりも小説の時代的変遷の方を強く感じてしまいました。


例えば幸田文「台所のおと」は、なんともきめ細やかな描写にため息が出るくらいですが、
その女性心理は時代がかっていてどうもしっくりこない。
私くらいの年でそう感じてしまうくらいなので、
若い人にはどうなのか。
いえ、かえって新鮮に思うかもしれませんけれど。
河野多恵子「骨の肉」についてはなおさらで、
いや、正直これはちょっと受け入れがたい。


本巻で一番しっくり来たのは、最終話よしもとばなな「幽霊の家」。
決してホラーではないのですが、
男女の心の機微というかそういうものの切り取り方が
やっぱり"今"なのだなあ。
今まで当たり前のように受け止めていましたが、
時代によって男女の関係性とか心の機微の捉え方が
ずいぶん変わってきているものなのでした。
どこがどう違うのか? 
もはや「国文」を学んで40年弱を経た私には説明のしようがありません。
それをまとめることができれば一冊の本ができましょう・・・。

「女がそれを食べるとき」 井上荒野他 楊逸選 日本ペンクラブ編 幻冬舎文庫
満足度★★☆☆☆


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