神探偵?
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どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。
ある日そこに「紙鑑 定」を「神探偵」と勘違いした女性が、
彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。
手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。
ダメ元で調査を始めた渡部は、
伝説のプラモデル造形家・土生井(はぶい)と出会い、意外な真相にたどり着く。
さらに翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、
妹の部屋にあったジオラマを持って渡部を訪ねてくる。
土生井とともに調査を始めた渡部は、
それが恐ろしい大量殺人計画を示唆していることを知り――。
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「このミス」の大賞受賞作ですね。
でも、「紙鑑定」という表題から想像する内容とはちょっと違ったかな?
という印象が最後まで残ってしまった・・・。
そもそも主人公・渡部は探偵でも何でもありません。
紙を扱う商売で自らを「紙鑑定士」と呼んでいる。
しかしある日、「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いした女性客が、
彼氏の浮気調査の依頼にやってくる。
手がかりはプラモデルの写真・・・ということで、
なんとこの物語、テーマは「紙」を離れて「模型」になっていきます。
プラモデルやジオラマ、ドールハウスめいたもの・・・。
それがまだ発覚もしていない事件の手がかりになっていく。
渡部が協力を仰ぐのが、伝説のプラモデル作家・土生井(はぶい)。
ほとんどゴミ屋敷みたいな家で貧乏暮らしというこのキャラクター造形がなかなか楽しい。
そして最後にはとんでもない大量殺人を暴くことになるのですが・・・。
まあ、面白く読めました。
でも返す返すも、なぜ「紙鑑定士」なのやら、
内容と題名の乖離がなんとも残念な気がしてしまいます。
やはり、謎の主題は紙であってほしい。
そして悪いけど、ここに登場する晴子と土生井がいい仲になるというのが、全く納得できない。
普通の女子が、ゴミ屋敷の住人を好きになりますかね?
いや、無理、無理。
渡部の元恋人・真理子の人物像も、できすぎです。
やっぱり「このミス」なんだなあ・・・、というところでは納得ですが、
あんまり大人向けではないですね。
近年、「このミス」大賞受賞作にはのめり込めないと感じている私。
それを確認してしまったという結果でした。
単に私自身の思考力が柔軟でなくなった、ということなのかもしれませんが。
「紙鑑定士の事件ファイル」歌田年 宝島社文庫
満足度★★★☆☆
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