鋭い嗅覚を持つ青年
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元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。
そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、
客の望む「香り」を作っていた。
どんな香りでも作り出せる朔のもとには、風変わりな依頼が次々と届けられる。
一香は、人並み外れた嗅覚を持つ朔が、
それゆえに深い孤独を抱えていることに気が付き──。
香りにまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。
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人並み外れた嗅覚を持つという青年が登場。
高貴な香りとロマンに満ちていますが、それだけではなく、
引きこもった部屋のすえた匂い・・・
そんなものも混在するのが魅力、一種独特な雰囲気のある作品です。
元書店員の一香は、仕事に出るのがつらくなり、
ほとんど引きこもりのような生活を続けていたのですが、
これではいけないと、気力を振り絞って出かけたコンビニで、
とある求人広告を目にします。
それによって、古い洋館の家事手伝いのあるバイトについた一香。
そこは、調香師の小川朔が幼馴染みの探偵・新城とともに
客の望む「香り」をオーダーメイドしているのでした。
人並み外れた嗅覚をもつ、朔。
そこでは香水も濃い化粧も御法度。
庭で作っているハーブなどで作った化粧水やシャンプーの使用のみ許可されます。
その人の匂いで相手の体調や、嘘をついていることまで嗅ぎ分けてしまう。
それはある意味不幸なことでもあり、朔はそのために悲惨な幼少期を過ごしていたのです。
その感覚は人と分かち合うこともできず、孤独でもある。
一種独特なこの青年の成り立ちは、若干少女小説か少女漫画めいてもいて、魅力的。
そこへ彼自身の不幸な過去や、一香の兄のエピソードが挿入されることによって、
現実から浮遊することがくいとめられているようです。
私は好きです。
この続編、「赤い月の香り」もすでに出ているのですが、
私は文庫化を待つことになりましょう。
楽しみです。
「透明な夜の香り」千早茜 集英社文庫
満足度★★★★☆
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