映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

バカ塗りの娘

2023年09月08日 | 映画(は行)

伝統工芸と今

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本作のバカ塗りというのは、青森の伝統工芸「津軽塗」を指します。
バカ丁寧に塗っては研ぐ工程を繰り返すためにそう呼ばれているようです。

 

青森県弘前市。
このバカ塗りこと津軽塗職人の青木清史郎(小林薫)は、父の後を継いで二代目。
しかし最近は注文も減って、この業界も先細りの感を拭い去れません。

その娘、美也子(堀田真由)は、高校卒業後もやりたいことが見つからず、
家計を助けるためにスーパーで働いています。
何をやってもうまくいかず、自分に自信が持てないのです。
でも、父の「塗り」の手伝いだけは、唯一没頭できるのでした。

それで、津軽塗の道に進みたいと思いながらも、
女が職人になることなどあり得ないとハナから思い込んでいる父に
言い出すことができません。

 

兄(坂東龍汰)は、とうに家業を継がず美容師になると決めて家を出ています。
父は業界の斜陽と共に気力を失っていき、家族もバラバラに・・・。

 

これは父と娘の断絶の話というよりは、男女格差の話であるかもしれません。
伝統は確かに素晴らしいけれど、それを継ぐのが女であってなぜ悪いのか。

美也子は、廃校になった出身校でピアノを見つけ、
そのピアノに塗りをしてみること思いつきます。
伝統工芸がアートになる瞬間。
そういうものを見た気がします。
伝統と新しい発想とが結びあって、新たな可能性が生まれていく。

兄が連れてきたパートナーが男性だったりして、
本作、性差を軽々と乗り越えて、新しい社会のあり方を提示しているようにも思います。
舞台が大都会ではなく、片田舎の小都市というところもいい。

ちょっと高くてもいいので、いい「塗り」の器を使ってみたくなりました!!

 

<シアターキノにて>

「バカ塗りの娘」

2023年/日本/118分

監督:鶴岡慧子

原作:高森美由紀

出演:堀田真由、坂東龍汰、小林薫、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、木野花

 

伝統工芸の斜陽度★★★★☆

ジェンダーフリー度★★★★☆

満足度★★★★☆



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