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「彼女らは雪の迷宮に」芦辺拓

2012年04月15日 | 本(ミステリ)
外側の世界も忘れずにね

彼女らは雪の迷宮に (祥伝社文庫)
芦辺 拓
祥伝社


* * * * * * * * * *

雪深い谷底の山荘に招かれた6人の女たち。
いわゆる「雪の山荘」という、ミステリにはつきもののシチュエーションのこの作品。
けれども著者は、それを逆手にとって、非常に凝った展開を見せてくれます。
おなじみの弁護士兼名探偵の森江春策と
その助手新島ともかのシリーズ。


6人の女たちがとある山中のホテルに招待されてやってくるのですが、
その山荘が振るっています。
私設ロープウエイでたどり着くその山荘は、
なんと山頂ではなく谷底にあるのです。
折しもドラマチックに吹雪模様。
しかも従業員は誰も姿を現さない。
このような不気味な状況で、事件が起こらないわけがないではありませんか!!
そして案の定、彼女らの姿が一人、二人と消えていく・・・。


はじめの方で、森江春策が新島ともかに、
「雪の山荘」など、クローズドサークルと呼ばれるミステリの講釈をする場面があります。

もし君がほんまにそういった事件に関わることがあったとしたら、
閉じられた円の中だけを見るのではなく、
その補集合、つまり外側の世界をも忘れずにね。
仮に雪に閉ざされた山荘ならば、
そこでの出来事を常に全体との関わりの中で考えたほうがいい。

この物語は、まさに、外の出来事を抜きに語れない作品なのでした。
元気なゴールデン・レトリーバーの"金獅子"に久しぶりに会えたのも嬉しかった!!


「彼女らは雪の迷宮に」芦辺拓 祥伝社文庫
満足度★★★☆☆


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