映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

命をつなぐバイオリン

2013年04月06日 | 映画(あ行)
大人たちがバカだからさ・・・



            * * * * * * * * *

第二次世界大戦下、ナチス・ドイツに侵攻されたウクライナが舞台です。
ユダヤ人の少年アブラーシャはバイオリン、
少女ラリッサはピアノに特に優れていて、
神童と呼ばれていました。
二人は幼なじみで、いつも共に練習をし、演奏しているのです。
そんな二人を見たドイツ人少女ハンナは二人に憧れ、
共にバイオリンの練習をするようになります。
そして3人は音楽で絆を深めていくのです。



ハンナのお父さんはドイツからウクライナのドイツビール工場の経営のために、
こちらに来ていたのです。
そんな時、ナチス・ドイツが、ロシアに侵攻を始めます。
つまりはロシアとドイツが敵対関係になってしまった。
とすれば、敵地のまっただ中にいるハンナ一家に危険が迫ります。
そんな時に、子どもたちが親しくしている縁で、
ハンナ一家はアブラーシャの一家にかくまってもらうのです。
さてしかし、それもつかの間。
ついにこの街にドイツ軍がやって来ました。
ハンナの一家はこれで安泰。
また、一般のロシア人は、ドイツ軍に反抗さえしなければ、
普通に生活していられます。
しかし、ユダヤ人は・・・。
ユダヤ人はただでさえも差別を受けていたのですが、
ナチス・ドイツからはただならぬ迫害を受けますね。
今度は、ハンナ一家がアブラーシャとラリッサの家族を匿うことになるのです。
しかも同じ部屋で。
なんという運命の皮肉・・・。
けれど、ついに彼らはドイツ軍に発見され、家族は収容所へ送られてしまいます。
ただ、アブラーシャとラリッサだけは、その音楽の才能のために残されるのですが、
二人は大変過酷な運命と戦わなければならなくなってしまうのです。

 
「ハンナと私達が敵同士だなんて、どうしてこんなことになってしまったのかしら・・・」
とつぶやくラリッサに、アブラーシャはいいます。
「大人たちがバカだからさ」
まさに馬鹿げたことなのですが、
人種間の差別や争い、これは今も消えてはいませんね・・・。
それにしても、わざとラリッサにプレッシャーをかけまくるナチス将校のおぞましさ・・・。

大人のすることじゃない。
衝撃のラストに、涙が止まりません。



普通バイオリンを弾く子といえば、
指に傷を付けないように、大切にされて何もしない、
華奢でひ弱・・・、そんなイメージがあります。
けれどもアブラーシャはそうではないんですよね。
ナイフも使うし、労働もする。
並以上に生活感溢れたくましい。
そのうえでのあの器用な指さばき、というのがすごくいいなあ・・・と思いました。



美しい音楽とは裏腹に、
戦争が狂わせる人々の運命、
人種差別のバカバカしさ、
生死を分ける一瞬の緊張感、
多くを訴えかける作品です。


「命をつなぐバイオリン」
2011年/ドイツ/100分
監督:マルクス・O・ローゼンミュラー
出演:エリン・コレフ、イーモゲン・ブレル、マティルダ・アダミック、カイ・ビージンガー、カテリーナ・フレミング

音楽性★★★★☆
歴史発掘度★★★☆☆
衝撃度★★★★★


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