映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「マドンナ・ヴェルデ」 海堂尊

2013年04月05日 | 本(その他)
子供を宿して、母はなお成長する

マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)
海堂 尊
新潮社


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美貌の産婦人科医・曾根崎理恵、人呼んで冷徹な魔女。
彼女は母に問う。
ママ、私の子どもを産んでくれない―?
日本では許されぬ代理出産に悩む、母・山咲みどり。
これは誰の子どもか。
私が産むのは、子か、孫か。
やがて明らかになる魔女の嘘は、母娘の関係を変化させ…。
『ジーン・ワルツ』で語られなかった、もう一つの物語。
新世紀のメディカル・エンターテインメント第2弾。


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「ジーン・ワルツ」は大変興味深く読みましたが、本作はその続編。
前作では医師曽根崎理恵の視点で描かれていたストーリーが、
今回ではその裏側、山咲みどりの視点で語られていきます。
55歳で娘の子供を出産。
随分勇敢なお母さんだ・・・と思っていたのですが、
その裏にはかなり理恵の勝手な理論があって、
母は振り回されてやむなく、という感が漂います。
けれども、前作でも書いたかな? 
"母は強し"なんですね。
お腹に子供を宿すようになってから、
みどりは次第に気持ちが若返り、強くなっていくような気がします。
受精卵を受け入れる前に、みどりは女性ホルモンの投与を受けて、
すでに止まっていた生理がまた始まるという描写があります。

「昔の生理は沈鬱な冬の日本海だが、
今回の生理は、明るい日差しのエーゲ海のようだ。
月のものが訪れるたびに。こんな幸福感を味わっている女性がいたのかと思うと、
かすかな羨望を覚えた。」

う~ん、私も生理をそんな風に考えたこともなかったけれど、
それを喪失した今となっては、この羨望は私自身ものでもあるなあ・・・と、
妙に納得してしまいました。
これを書いたのが男性だなんて、ちょっと信じがたいくらいです。
みどりは俳句の会に入っていたり、
ほんのちょっとした食事の用意のシーンなど、
とても情緒が漂うシーンが多い。
しっとりと深い味わいがあります。
そして、お腹の父親である理恵の夫と交わす手紙もいいですよね。
海堂尊さんは、医療ミステリ作家としての側面が大きいのですが、
私はかねてよりこの方の醸す叙情性に驚かされていまして、
だから飽きずにもっと読みたくなるのです。
私はぜひまたこの子たちの成長した何年か後の物語を読みたい・・・!!

→ジーン・ワルツ

「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊 新潮文庫
満足度★★★★☆


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