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「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語 六之続」宮部みゆき

2022年12月04日 | 本(その他)

スケールの大きな闇

 

 

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宮部みゆきのライフワーク、語り手を新たに新章スタート!

文字は怖いものだよ。遊びに使っちゃいけない――。
江戸は神田にある袋物屋〈三島屋〉は、一風変わった百物語を続けている。
これまで聞き手を務めてきた主人の姪“おちか”の嫁入りによって、
役目は甘い物好きの次男・富次郎に引き継がれた。
三島屋に持ち込まれた謎めいた半天をきっかけに語られたのは、
人々を吸い寄せる怪しい屋敷の話だった。
読む者の心をとらえて放さない、宮部みゆき流江戸怪談、新章スタート。

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宮部みゆきさん、三島屋百物語シリーズの6巻目。

まず、本作の題名「黒武御神火御殿」は、
どうにも、どう読んでいいのか分からないですよね。
「くろたけ ごじんかごてん」と読みます。
その意味するところは、まあ、実際に読んでもらう方がよさそうです。

その内容はあとに回すことにして、まずは本巻で大きな変化が。
これまで三島屋百物語の聞き手となっていたおちかが、
お嫁に行ってしまいました・・・!

前巻のラストで語られた、勘一の謎についてはそのまま、
勘一とおちかの胸底に秘めたままというのが心憎いですね。
とにかくそのため、聞き手の役割は三島屋次男・富次郎に引き継がれます。
そのトップの語り手は富次郎の幼馴染み。
ちょっと色狂いめいた話になりまして、
なるほど、こういう話の聞き手がおちかでは気の毒。
富次郎とバトンタッチした意義を明らかにします。

 

そして本作のなんといっても一番難関の話は、表題作「黒武御神火御殿」。
三島屋に持ち込まれた謎めいた半天から始まるストーリー。
なにやらご禁制の耶蘇教に絡む話のようなのです。

 

特に縁もゆかりもない数人の男女が怪しい屋敷に迷い込みます。
その敷地はとてつもなく広い林のようであり、湖のようでもあり、
不気味な魔物がいるようでもある。
そこをさまよってようやくたどり着く屋敷は、途方もなく広くて、
長い縁側や廊下が延々と続いていたり、広間がいくつもいくつも連なっていたり・・・。

そんな中で見つけた巨大な大広間のふすま絵に書かれていたのが、
もうもうと煙を噴き上げ、今にも噴火が起きそうな火山の絵。
いや、それは本当にただの絵なのか? 
その熱気、吹き出すガス、地震・・・
リアルにここに集まった人々の身に迫ってくるのです。

一体この屋敷は何なのか。
この人々は何のためにここに集められたのか。
やがて起こる悲劇。
結局のところ、この変異は「耶蘇教」がらみではあるけれど、
キリスト教特有の悪魔めいたものが登場するわけではなく、
これまでの百物語同様に人の恨みや辛み、
巨大な負の念が招いたことのようです。
これまでで一番スケールの大きい話だったかも。

図書館蔵書にて

「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語 六之続」宮部みゆき

満足度★★★★☆



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