キティが見る過去と現在
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第二次世界大戦下、ユダヤ人の少女アンネ・フランクが
空想の友人キティにあててつづった「アンネの日記」を原案としたアニメです。
「アンネの日記」は世界中の多くの人々に読まれ、
映画化されたり、ドキュメンタリーとして紹介されたり、
知らない人はいないといっても過言ではないでしょう。
でも本作があえてアニメ化されたのは、アンネが日記に「キティ」と名付けて、
実際に友に語りかけるように描いた、そのことを大事にしたかったのでしょう。
舞台は現在。
オランダ・アムステルダムのアンネの博物館。
すなわち、あのアンネ達が隠れ住んでいた建物が、そのまま現在博物館になっているのですね。
そこに保管されている「アンネの日記」オリジナルから
煙のようなものが湧き上がり、それがキティの姿になります。
博物館内では彼女の姿は誰にも見えないのですが、
そこから外へ足を踏み出すと、誰の目にも一人の少女の姿が見えるようになるのです。
キティは日記を開き、過去へ遡り、当時のことを思い返していきます。
ユダヤ人が次第に生活を制限されて行く様子。
アンネ達が隠れ家に住むようになること。
アンネがペーターと親しくなること。
次第に食べ物の入手が厳しくなっていくこと・・・。
さて、そうしてキティはアンネと会いたいと思うのですが、
アンネはおろかその家族、同居していた人々、誰もいません。
そうです、日記はアンネがドイツ軍に連れて行かれる前のところで終わっているので、
キティはその後のアンネのことを知らないのです。
アンネを探しに、博物館の外、アムステルダムの街にさまよい出るキティ。
そこでキティは、現代の豊かな人々の生活を見て驚くのかと思いきや、
そうではなくて、難民のように虐げられている多くの人たちのことを目にします。
かつてユダヤ人が受けた差別と、異国からの難民への差別と、
何の違いがあるのでしょう?
そしてまた、キティはアンネのその後の運命についても知ることになります。
あの時、確かに生きていた一人の少女の、あまりにも過酷な運命のことを。
一見の価値ありのアニメです。
<WOWOW視聴にて>
「アンネ・フランクと旅する日記」
2021年/ベルギー・フランス・ルクセンブルグ・オランダ・イスラエル
監督:アリ・フォルマン
メッセージ性:★★★★★
満足度★★★★☆
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