映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

カンパニー・メン

2012年04月09日 | 映画(か行)
アメリカン・ドリームの崩壊



                      * * * * * * * * * *

リーマン・ショック後の不景気で会社をリストラされた男のストーリー。
大企業のエリート社員である30代後半、ボビー(ベン・アフレック)。
彼はある日突然会社からクビの宣告を受けます。
会社が経営の悪化から大規模なリストラを断行した結果です。
妻とまだ小さい子供たちを養う身。
すぐに次の仕事を見つけなければ生活も行き詰ってしまう。
・・・しかし、どこからもオファーが来ません。
一流会社エリート社員のプライドを捨てきれないボビーは、
もっと質素な生活に切り替えようという妻の提案も受け入れようとしなかったのですが・・・。



ものすごく身につまされるストーリーです。
突然の会社からの解雇。
まるで自分自身が社会から不要扱いされたような気分に落ち込みます。
街に出れば人々は忙しそうに行き交っているのに、
自分だけ行き場がない孤独。不安。
アメリカン・ドリームもついに崩壊・・・。
まさにそういう世相を映し出していますね。
けれど、まだ若いボビーはいいほうなのです。
プライドさえかなぐり捨てれば、義兄の工務店で大工仕事をしてでも何とか食いつなぐことは出来る。
そしてまた、奥さんや子供たちが、彼を力づけてくれる。
・・・ううむ、彼は奥さんに恵まれましたね。
実際はなかなかこうは行かないと思うけれど。


けれど、同様にリストラされた60歳間近のフィル(クリス・クーパー)の場合は、そうではなかった。
もう再就職は絶望的だし、娘にはまだまだ学費がかかるのに、お金のあてはない。
奥さんは近所に知られたくないと言って、
無理やり彼にスーツを着せ鞄を持たせて毎日彼を送り出す。
そうして取り返しのつかない悲劇が起こるのです。



現社長と力をあわせてこの会社を創り上げた重役のジーン(トミー・リー・ジョーンズ)は、
このやり方に反対するのですが、
それを煙たがられて、彼もまたクビになってしまうのです。
彼は言います。

この会社は、実際に船を自分たちで作るところから始めた。
毎日遅くまで働いて、船を作ることが自分たちの誇りだった。
いつから会社はこんなに巨大で訳のわからないものになってしまったのだろう・・・。


先日「ヒューゴの不思議な発明」でも少し感じたのですが、
かつては物を作って売るということがとてもシンプルでした。
ものの構造自体も、その流通システムも。
けれど今は機械自体も社会のシステムも複雑で巨大で、
その全貌を見極めることすら難しい。
そして人間性はその巨大なシステムの中で押しつぶされている。
非常に今重要な問題提起をしている良作です。



なんだかお久しぶりのケビン・コスナーは、
初めちょっと嫌味なお義兄さんで、
でも実は・・・、というナイスな配役でした! 

カンパニー・メン [DVD]
ベン・アフレック,ケヴィン・コスナー,トミーリー・ジョーンズ,クリス・クーパー,ローズマリー・デヴィット
Happinet(SB)(D)


「カンパニー・メン」
2011年/アメリカ/104分
監督・脚本:ジョン・ウェルズ
出演:ベン・アフレック、クリス・クーパー、トミー・リー・ジョーンズ、ケビン・コスナー、マリア・ベロ


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