戦中の北海道で
* * * * * * * * * * * *
昭和二十年、終戦間際の北海道・室蘭。
逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密をめぐり、
軍需工場の関係者が次々と毒殺される。
アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影らとともに捜査に加わるが、
事件の背後で暗躍する者たちに翻弄されていく――。
真の「国賊」は誰なのか?
かつてない「戦中」警察小説!
* * * * * * * * * * * *
終戦間際の北海道、陸軍の軍事機密を巡る殺人事件ということで、
私は重い社会派ミステリかと思って読み始めましたが、
これはエンタテイメントですね。
すなわちすごく面白い!!
著者は北海道出身ではないようなのですが、
昭和二十年の室蘭や札幌の町の様子がリアルに描かれているのには驚きました。
その頃の札幌市役所がどこにあったのかなんて、私でも知らなかった・・・。
主人公日崎八尋はアイヌとのハーフで、特高の刑事。
特高、すなわち今で言う公安、治安維持・思想犯などを取り締まる部署。
というといかにもきな臭い。
しかし彼は自分らは皇国の臣民であるという思想にどっぷりつかっていて
疑問にも思いません。
序章では、室蘭の製鉄所の飯場に潜入し、朝鮮人たちと共にタコ部屋に寝起きし、
重労働に耐えるという過酷な任務に当たっています。
そして、そこから以前脱走した者の手口を探るのですが、
日崎は気のいい同僚ヨンチョンをだまして共に脱走しようと持ちかけるのです。
その企ては成功し、脱走の手口を判明させると共に、
脱走犯ヨンチュンを逮捕という成果を揚げるのです。
人をだまして逮捕・・・。
しかし彼は「お国のため」のこの仕事に疑問を持ってはいません。
う~む、物語の主人公としてこれでいいのか、と思うところですが、大丈夫。
日崎はその後、アイヌを忌み嫌う拷問王・三影刑事に殺人犯の冤罪を着せられて、
なんと網走の刑務所に送られてしまう・・・!
思いがけず、過酷な運命の渦に巻き込まれていく日崎は、少しずつ変わっていきます。
そしてそこで出会うのがなんと・・・!
いやあ、物語ですねえ・・・。
また、陰謀の中心には「ウラン爆弾」がありますよ。
時代的スリルもたっぷりです。
文句なく面白い。
図書館蔵書にて(単行本)
「凍てつく太陽」 葉真中顕 幻冬舎
満足度★★★★.5
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます