映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジュディ 虹の彼方に

2020年10月11日 | 映画(さ行)

夢や希望や幸せは、本当にどこにもないのか?

* * * * * * * * * * * *

レニー・ゼルウィガーが第92回アカデミー最優秀主演女優賞を受賞した作品。
本来なら劇場で見たはずの作品ですが、コロナ禍で見に行けなかったのでした・・・。

本作は「オズの魔法使い」で知られるハリウッド黄金期のミュージカル女優、ジュディ・ガーランドの物語です。
しかしその全盛期は思い出として垣間見るだけ。
47歳の若さで急逝する半年前、1968年冬、ロンドン公演の日々を綴ります。

1968年、かつてミュージカル映画の大スターとしてハリウッドに君臨したジュディ(レニー・ゼルウィガー)。
仕事で遅刻や無断欠勤を繰り返し、映画出演のオファーは途絶え、
巡業ショーで生計を立てていました。
借金がかさみ住む家もないというありさま・・・。
やむなく、まだ幼い娘・息子を離婚した夫に委ね、
起死回生を懸けてロンドン公演へ出向きます。
それでもやはり、舞台に立つのは恐怖で足がすくみ、逃げ出したくなってしまう。
そんな気持ちをお酒で紛らわし、周囲の人に引きずられるようにして彼女は舞台に立つのです。
しかしひとたび舞台に立てば、彼女のパフォーマンスはいやというほど体にしみこんでいる。

そんな中、子役時代から映画撮影のためにすべてを捧げてきた自身の来し方を
彼女は思い出すのです。
常に新しい歌やダンスを憶えなければならないストレス。
睡眠時間は足らず、太らないようにと食事制限され、お菓子などもってのほか。
次から次へと休む間もないスケジュール・・・。

実のところ、本作中では語られてはいませんが、
アルコールや薬物に浸り、心も体もボロボロ、
自殺未遂で入退院を繰り返し、結婚5回、カムバック6回・・・という、悲惨な人生だったようです。

誰もがうらやむ華々しい活躍の裏の苦しみ・・・。
そういうものはやはりあるのだなあ・・・。
彼女が47歳で急逝したというのも、こんな無理矢理な生活のためであることは確かなようです。

さて本作、ラストで歌う「オーバー・ザ・レインボウ」が圧巻。
実も心もボロボロのジュディが、密やかに歌い始める。

あの虹の向こうのどこかに、何か輝くもの、夢や希望や幸せがある。

子どもの頃、うんと若い頃はそれを信じていた。
だけれども、今の自分は知っている。
そんなものはどこにもないのだ・・・と。

あまりにも切ないこの思い。
ジュディは途中で歌えなくなってしまいます。

涙。
涙。

いやもう、レニー・ゼルウィガーにジュディ・ガーランドが憑依してるんじゃないかと思うくらいに、
その悲しみが伝わります。

ところが、そのままでは終わらない!!

これが感動のシーンに続きます。
そこでまた、涙、涙・・・。

ぼーっとしてしまうくらいに感情を揺さぶられる作品でした。

今さらながら私は、アクション大作では感動できない。
やはり人の心のドラマこそが映画の醍醐味。
このことを確信しました!!

 

<J:COMオンデマンドにて>

「ジュディ 虹の彼方に」

2019年/イギリス/118分

監督:ルパート・グールド

出演:レニー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、クイン・ウィットロック、
   ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン

 

人生の悲哀度★★★★★

満足度★★★★★

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿