こ、怖いんですけど・・・
肉弾 | |
河崎 秋子 | |
KADOKAWA |
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北海道のカルデラ地帯で孤立した青年が熊や野犬と戦い、人間の生きる本能を覚醒させてゆく―。
圧倒的なスケールで描く肉体と魂の成長物語。
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「颶風の王」で鮮やかに人と野生動物の生き様を描き出した著者。
ということで見ると、本作、やはりそのテーマが受け継がれたと言っていいでしょう。
ただし、こちらのほうがもっと強烈です。
登場するのは大学を休学中のニートである貴美也。
その父親である豪放でワンマンな男。
貴美也はその父親を嫌いぬいているのに、
結局その庇護から逃れようともしないでいるのです。
ある時、父親の強引の誘いで北海道での狩猟に連れ出される。
父子で分け入ったカルデラ地帯の森で、凶暴な熊と遭遇。
あっけなく父は熊の餌食となるも、貴美也は辛くもその場は逃げ出すことに成功。
ただしその後はたった一人で生き抜かなければならない・・・。
ここには他に、数匹の犬たちも登場します。
人に捨てられ、この大自然の中でいつしか協力しあい
群れをなして生きるようになった犬たち。
彼らにとっては人も敵ですが、貴美也の死に物狂いの反撃により、
貴美也は彼らの群れのボスとして認められるようになるのです。
人の営みの中で生きていた犬たちが、またその人の勝手な行動により捨てられて、
自分たちだけで生きていく他なくなる。
でも、それは本来の生き物の姿。
しかし貴美也もまた、学校や父親という人間関係の中で生きられなくなっており、
この極限状況に至って自分の力で立つしかなくなってしまうわけです。
まさに、命をかけて。
人という動物の本来持っているはずの「生きる力」を取り戻す貴美也。
強く凛として、残酷だけれど美しく、そして悲しい。
そんな自然の生き物の姿がくっきりと浮かび上がります。
圧倒的な物語でした。
それにしても、やっぱりちょっと怖すぎでしたけど・・・。
図書館蔵書にて
「肉弾」河崎秋子 角川書店
満足度★★★★☆
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