「私」にのっかっている重石とは・・・?
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カム・ギャザー・ラウンド・ピープル |
高山 羽根子 | |
集英社 |
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おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、
下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、
自分の言い分を看板に書いたりする「やりかた」があると知ったこと、
高校時代、話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと…。
大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。
イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。
映像の中、デモの先頭に立っているのは、ドレス姿の美しい男性、成長したニシダだった。
第161回芥川賞候補作。
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最近せっかく高山羽根子さんを読み始めたので、ついでにという感じで手に取りました。
「私」が小学生の頃から中・高・学生時代を経て就職した頃まで、
順にその時々のエピソードが語られていきます。
くちゃくちゃの顔のおばあちゃんは、その背中が一番美しかったこと。
小学校からの下校途中で知らないおじさんにお腹をなめられたこと。
中学の頃、近所の学生寮中庭での出来事・・・。
特別に事件的なことが起こるわけではありません。
何の脈絡もないエピソードのようでもあります。
が、しかし、次第にどうして特にこれらのエピソードが取り上げられたのかがわかってきます。
それは高校時代に「友だち」だったニシダとの再開。
「私」はニシダが自分を認めた瞬間に逃げ出してしまうのです。
読んでいる方も面食らいます。
なぜいきなりここで、走って逃げ出すのか・・・。
答えは最後の最後。
「私」の友人イズミは言うのです。
「シバちゃんはなんか重石がのっかってるみたいに見える」
そこなんです。
「私」にのっかっている重石。
「女性」性の痛みのようなもの・・・、と私には思えるのですが。
また、最後の代々木公園近辺のリアルな描写がステキです。
登場人物とともにビデオカメラを回しながら歩いて(走って?)いる感じです。
残念ながらその地域のことを私はよくは知らないのですが、
知っている方なら「うん、そうそう」ときっとつぶやくはず。
SF的展開はなし。
不思議世界に放り出されることもなし。
でも私、これまで読んだ(わずかですが)高山羽根子さん作品では本作が一番好きかも。
今後が期待できます。
図書館蔵書にて
「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」高山羽根子 集英社
満足度★★★★★
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