映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「東京すみっこごはん 雷親父とオムライス」成田名璃子

2016年05月19日 | 本(その他)
核家族から「共同」家族へ

東京すみっこごはん 雷親父とオムライス (光文社文庫)
成田 名璃子
光文社


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年齢も職業も異なる人々が集い手作り料理を食べる"共同台所"には、
今日も誰かが訪れる。
夢を諦めかけの専門学校生、妻を亡くした頑固な老人、勉強ひと筋の小学生。
そんな"すみっこごはん"に解散の危機!?
街の再開発の対象地区に含まれているという噂が流れ始めたのだ。
世話好きおばさんの常連・田上さんは、この事態に敢然と立ち向かう。
大人気シリーズ、待望の続編!


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4月から仕事に出なくなって、
映画は殆どこれまでと同じペースで見ているのですが
さすがに時間はあるので、本を読む機会は多くなりました。
そのため、「本」のブログ記事がダブつき気味。
特におススメなものを紹介していくことにしましょうか。
特につまらない本の記事も 実は面白かったりするんですけど・・・。
なんだかんだと言って、毎日更新になっているこの頃。

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さて、前巻を読んで間もないのですが、もう続編が出ました。
本巻には前巻で紹介された常連さんたちにまた、何人かの新人さんが加わりながら、
相変わらず賑やかに食卓を囲んでいます。


短編の連作となっていますが、本巻を貫いているのは、
この「すみっこごはん」のある界隈の再開発のこと。
今は古い商店街のこの辺り、再開発の計画があって、
もしかすると「隅っこごはん」の存続が危ういかもしれない・・・。
そんな不安を絡めながら、ストーリーは進んでいきます。


私が一番好きだったのは、やはり表題となっている「雷親父とオムライス」。
雷親父と言うのは、この短編のひとつ前、「失われた筑前煮を求めて」で初登場する有村老人です。
妻に先立たれて、わびしい一人暮らし。
しかしご近所ではおせっかいで口うるさい頑固オヤジと思われているようです。
ある日すみっこごはんに迷い込んだ彼は当番にあたって筑前煮を作ったのですが、
下準備が適当なので大失敗。
・・・という印象深い登場をしたオジイサン。
そして本作「雷親父とオムライス」では秀樹くん、10歳が初登場。
両親はいつもケンカをしていて不穏。
しかし母親は異常なくらい教育熱心で、
いい学校に入って、いい会社に入るか医者になるか、と
息子秀樹への期待は高く、野菜は無農薬野菜しか使わない。
母親はそのように熱心な割にいつもでかけていて、
一人ぼっちで夕食を食べることも多い秀樹くん。
そんな彼が「すみっこごはん」ではじめて、母親に押し着せられた以外の世界を知ります。
特に、雷親父こと有村氏には本当の祖父のように色々なことを教わります。
少年のしなやかな心と、ぐんぐん成長していくさまが心地よい。
が、しかし、せっかく好印象となってきた有村氏が・・・!
切なくはありますが、なんといっても子供の伸びる力に救われる、ステキな一作。

→「東京すみっこごはん」

「東京すみっこごはん 雷親父とオムライス」成田名璃子 光文社文庫
満足度★★★★☆



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