映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「まるまるの毬」西條奈加

2017年12月28日 | 本(その他)
菓子職人である父の秘密とは?

まるまるの毬 (講談社文庫)
西條 奈加
講談社


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親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。
武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、
出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、
他人に言えぬ秘密があった。
愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。
吉川英治文学新人賞受賞作。

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西條奈加さんは、私にははじめての作家さんですが、
あら、北海道出身の方でした。
存じ上げず、失礼しました。


近頃、書店の店頭に出ている新刊の文庫本を、
図書館の単行本を借りて読むという手を使うようになりました。
だんだんケチ臭くなってきましたが・・・。
文庫化された本なら、予約もほとんどなくてすぐ順番が回ってきますし、
ある程度売れたから文庫化となったわけで、そのへんは保証付き。
単行本のほうが目に優しいですしね。
ただし、時々文庫化にあたって改稿することがあるので要注意。
文庫だと巻末に解説があるのもありがたいのだけれど・・・、
あ、そうか、後でそこだけ立ち読みしよ。
こんな読み方は非常に出版社泣かせとはわかっているのですが、
いかにも単行本は高すぎます。
仕事の現役を離れた身としては、切実・・・。
余談ばかりになりました。
まあそんなわけで本作、文庫の新刊で興味を惹かれて、読んだという次第。


さて、本題に入る前にもう一つ。
題名の「毬」は「いが」とルビがふってあるのでちょっと意外に思いました。
私は「まり」だと思っていました。
調べてみるとこの字は「いが」でも「まり」でも正解。
つまり球状をしたものが「毬」で、
それが滑らかでもトゲトゲでも同じということのようです。
なるほど・・・。


で、ようやく本題。
江戸時代、父親とその娘、そして孫娘、
三代で営む菓子屋「南星屋」の物語。
お菓子というのがちょっと心惹かれます。
ここの主である治兵衛は、実は武家の生まれなのですが、
訳あってその身分を捨てて菓子職人となったのです。
諸国を巡り歩いてその土地々々のお菓子を習い覚えるという修行の賜物で、
この店は売り切れ御免の繁盛店となっています。
ところが、この治兵衛の出自にはさらなる秘密があって・・・。
その秘密のために、孫娘・お君の初々しい恋心が打ち砕かれることになってしまう・・・。
人の心の暖かさ、せつなさとともに
時代の持つ不条理も描かれ、最後には心がほんのり。
宇江佐真理さんのファンの方なら、きっとこちらも気にいると思います。
もっと、読んでみたくなりました。


図書館蔵書にて (単行本)
「まるまるの毬」西條奈加 講談社
満足度★★★★☆


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