海の見えるガーデンで
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海に臨む庭園での老女の自殺、所轄署のクラスター騒ぎ、
老人ホームを巡る不穏な噂、幼稚園児身代金誘拐
――総勢15名以上の住民の物語がパッチワークのように交錯する。
10年ぶりの〈葉崎市シリーズ〉は、とびきりビターな書き下ろし長編!
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若竹七海さん、10年ぶりの「葉崎市シリーズ」です。
そういえば、しばらくお目にかかっていなかった。
本作、2020年と、しっかりと現在を舞台としていまして、
コロナ禍にあり、皆マスク着用。
密を避け、換気やら消毒やらに追いまくられる日々。
それでも感染拡大の波が少し落ち着いた谷間にある頃の物語です。
登場人物として多くの住民が登場するのですが、
それぞれ個性たっぷりなので、割とわかりやすいです。
まずは、海の見える崖の上にあるガーデンで、
老女の自殺死体が発見されるのですが、身元が分かりません。
その後、幼児誘拐事件やら、老キルト作家殺人事件が立て続けに起こり、
警察署は大混乱。
そんな中、本作で事件を解決に導くのはおばちゃん警部補、二村。
ベテランです。
ノッシノッシと戦車が突進しているように歩く。
この時期、警察ではマスクをつけてさらにフェイスシールドをつけることが義務化されているのですが、
フェイスシールドの数が足りなかったようで、黒々と輝くサンバイザーを着用。
見るからに異様ですが、実はとてもキレる人。
いい感じです。
また本作ではガーデニングやパッチワークキルトが題材としてとりあげられていて、
これはもう、私のためにあるようなストーリーなのでした。
各章の題名が、キルトのパターン名となっているのもしゃれています。
海の見える崖の上に立つ老人ホーム。
おまけに、花々であふれるガーデン付き。
確かにこんな話があれば、私でも興味がわきます。
でも、作中ではこれは高齢者に狙いをつけた詐欺。
皆さん、気をつけましょう・・・。
ブラックなユーモア満載、楽しめました。
コロナ禍の描写については、後に、
「そうそう、こんなことがあったなあ・・・」と
懐かしく思える日が早く来るといいのですが。
<図書館蔵書にて>
「パラダイス・ガーデンの喪失」若竹七海 光文社
満足度★★★★☆
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