映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「身代わり忠臣蔵」土橋章宏

2018年09月02日 | 本(その他)

誰が誰の身代わりに・・・!?

身代わり忠臣蔵
土橋 章宏
幻冬舎

* * * * * * * * * *

江戸城松の廊下で、高家・吉良上野介が播磨赤穂藩藩主・浅野内匠頭に斬りつけられた。
浅野は即日切腹の上お家は断絶、
吉良は額と背中を斬られただけで一命を取り留めたはずだった。
しかし…。
衣食住に女にと、何不自由ない暮らしを謳歌する"吉良上野介"だったが、
赤穂浪士の仇討ち話を耳にして―。
替え玉人生の極楽と地獄を描く"異聞"忠臣蔵!!

* * * * * * * * * *

本作の著者も私にははじめての方だなあ・・、と思ったら、
あの「超高速参勤交代」の原作を書いた方だったのですね。
それならば、面白いこと間違いなし!
ということで、手にとってみました。


おなじみの忠臣蔵。
身代わりというのは誰のこと・・・?
というのは、実は吉良上野介だったのです!!


松の廊下で浅野内匠頭に斬りつけられてしまうのは、本物の吉良上野介。
傷はさほどのことではなかったのですが、頭に食らった一撃がもとの脳内出血で
あっけなく亡くなってしまった。
そこで見目形がよく似ている吉良の弟、孝証(たかあき)が
身代わりとして、上野介に成り代わることになったのです。
ところで、本作のホンモノの吉良上野介はとんでもないパワハラ親父で、
誰をも見下し、尊大で意地悪で短気。
配下の者も、いつも怒鳴りつけられるのが嫌で嫌でしょうがないという感じ・・・。
そんなだから、お役目の教えを請う立場の浅野内匠頭が、ほとんどいじめのような目に会うわけです。
それでも通常の良識ある大名なら、ひたすら耐えるのみ。
けれども、これまた浅野内匠頭も、女癖が悪く忍耐強くもないという、しょうもない人物。
だから、キレちゃったのですね。
松の廊下で・・・。
おかげで赤穂藩は取り潰し。
一族郎党が路頭に迷う。
そこで大石内蔵助が苦労を重ねることとなる・・・。


一方、身代わりとなった孝証は、実はとんでもない破戒僧で、
女や博打でお金を使い果たしては兄・上野介にお金をせびりに来ていたという、そんな人物。
しかし、兄の身代わりとして何不自由ない生活をするうちに、
いろいろなことがよく見えてきて、考えてしまうのです。
なぜかここで初めて「僧侶」としての自分を取り戻していく・・・。


ね、人物設定だけを見ても面白いでしょう。
で、ある時、身分を隠した大石内蔵助と孝証があるところで出会うのですよ・・・。
架空のお話ではありますが、もちろん知っている忠臣蔵の結末に結びついていく。
この発想がなんとも面白くて、ぐいぐい読み進んでしまいました。
このへんてこな忠臣蔵も、映画にならないかなあ・・・。

図書館蔵書にて
「身代わり忠臣蔵」土橋章宏 幻冬舎
満足度★★★★☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿