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「ひきだしにテラリウム」九井諒子

2013年05月04日 | コミックス
それぞれのワールドを旅するスリルと醍醐味

ひきだしにテラリウム
九井諒子
イースト・プレス


            * * * * * * * * *

奇想天外ショートショートコミック33篇。
この表紙イラストにひかれて手にとって見ました。

SFか?
メルヘンか?

まあ、そんなことはどうでもいいのです。
絵柄も自由、発想も自由。
著者の巧みな想像の世界に、一瞬で旅して帰ってくるこのスリルと醍醐味。
星新一氏のショートショートもいいのですが、
このコミックの世界では絵がすでにモノをいいます。
絵が邪魔して返って想像の余地がなくなるのでは? 
そんなことはありません。
彼女の創り上げたそれぞれのワールドが
より鮮明に浮かび上がって余韻をもたせます。
ショートショートに込められた世界観がタダモノではありません。


「龍の逆鱗」
ある村で一年に一度だけ龍を捉えて食べる習慣があるという。
捉えられた龍はまだ生きていて、
眼光鋭く睨みつけ、フーッ、フーッという息遣いが生々しい。
村人は日常茶飯事のごとく手早く龍をさばいて身を刺身にして差し出す。
うまいっ!!思わず夢中で頬張るが・・・。


「ユイカ!ユイユイカ!」
ある小国に、時折飛来するイエーカーという魔物。
この魔物には攻撃性が弱くそれ自体に害はないが
ごくまれに別の魔物がへばりつき、一国を滅ぼすほどの害をなすという。
従って、兵士は全力を上げイエーカーの到来を攻撃するが・・・。


「すごいお金持ち」
山のような豪邸に一人で住んでいて、
数千人の召使がいて、
玄関から部屋まではバスで行き、
毎朝採寸してその日着る服をつくる。
服が出来上がるまで裸のまま電車でお風呂に行く。
・・・こんな生活が果たして幸福?


「神のみぞ知る」
昔、ある小さな村で謎の奇病が流行。
都の陰陽師が言うには、
村の社に住みついている獣の姿をした神を
水の中に沈めて首に熊手を突き立てろ、と。
村人はたたりを恐れるが、他に手立てはなく、
この巨大な猫の姿をした神を川に沈めようとするが・・・。


どれも傑作なオチで、楽しいですよ~。
と言ったところで、
再び表紙イラストに戻ってみれば、
なるほど、このショートショートに登場する人物たちがひしめいていて・・・。
私、こういうごちゃごちゃした絵が大好きです! 
ストーリーの様々なシーンが思い出されるこのイラストは、
「ウォーリーを探せ」より面白い。
巨大な猫が昼寝して、
軍隊がいて、
オーケストラがいて、
バスを待ってるすごいお金持ちもいるし、
カニを剥く人、
こたつでみかんをむく人、
授業を受ける人・・・
おまけによく見たらこの絵はループになっていて、無限だ~。

いや、ほんと、面白い!!

「ひきだしにテラリウム」九井諒子
満足度★★★★★


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