下手な親ならいない方が・・・
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幼き日に生き別れた兄弟と、突然の再会。
町が登山道整備で揺れるなか、新成人として水神祭りを終えた和樹。
友人の類や類の妹・莉子そして和樹自身も
将来のことを考え始めていたがそんな折、
和樹と守の育ての義母が亡くなりその葬儀の日に現れたのは・・・?
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「詩歌川百景」新刊です。
本作の大きなテーマの一つは、
「血がつながっていても、親子関係はうまくいくわけではないし、
余計やっかいなことになることも多い」
というふうに言えると思います。
気持ちが通じ合わなければ、他人なら別れてそれでけりがつく。
けれど、血のつながりは切っても切れなくて、
いつまでもどこまでも呪いのようにつづいていく・・・。
例えば価値観がまるで違う、妙とその母。
子どもに対する愛情が欠如しているとしか思えない、和樹らの母。
本巻ではそういうことを踏まえつつ、
血のつながりではなくて「縁」があってつながった人々の
絆というか和を改めて考えさせられます。
下手な親ならいない方が良い。
皆で見守りながら子どもを育てて行くという新たな認識が、
世間で広がれば良いなあ・・・と。
それで本巻では、母の再婚(何度目でしたっけ?)のため、
離ればなれになってしまった和樹の弟、智樹が登場します。
彼は、母の連れ子として新たな男と共に暮らすことになったのですが、
すぐに母に捨てられて養護施設に入れられてしまった・・・。
それですっかりすさんでしまう。
母と共に暮らすことに危惧を覚えた和樹は、母と共に暮らさない選択をし、
よい養父母を得てとりあえず安全な生活を手に入れていたわけです。
ただし、生まれて間もないもうひとりの弟と共に。
それでどうも智樹は、和樹のことを恨んでいるらしく・・・、
というストーリーに見せかけて、どうもそう単純な話でもなさそう・・・
というのが、なかなかうまいストーリー運びですね。
なんだかんだと言っても、ある時期までは仲良く共に育った兄弟。
悪意ばかりが増幅していくわけでもないのですね・・・。
智樹にはよい「縁」の出会いが訪れなかった、そういうことなのでしょう。
それにしても彼らの母親が酷すぎ!!
本作にも、「海街diary」関係者が頻繁に登場。
それにしても、すずちゃんとそのダンナは話の中には出てくるのに、
直接的には登場しないのですね。
著者がそういう方針を貫くことにしたようですね。
残念。
ぜひ見たかったのに~。
「詩歌川百景 4」吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★☆
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