映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジョジョ・ラビット

2020年01月19日 | 映画(さ行)

着想にシビれる!!

* * * * * * * * * * * *


第2次大戦下ドイツ。
10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は
ヒトラーユーゲントで立派な兵士になることを夢見ています。
彼の脳内にはアドルフが住んでいて、ジョジョを叱咤激励するのです。

あるとき、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、
教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名を付けられてしまいます。
そんなある日、ジョジョは家の片隅に作られた小部屋に誰かがいることに気づきます。
ジョジョの母親(スカーレット・ヨハンソン)が匿っていた
ユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)でした。
ユダヤ人は人間ではない、というふうに思っていたジョジョは激しく動揺しますが・・・。



本作のオープニング。
なんとビートルズの「抱きしめたい」が流れます。
そして、ヒトラーに心酔し熱狂する群衆の映像。
これがまさに、ビートルズに熱狂する人々とぴったり重なり合う。
私、ここの部分でもう、痺れてしまいました。
この時代のドイツを描くのに、誰がビールズを思いつくでしょう! 
この感覚! 
私、このタイカ・ワイティティ監督に死ぬまでついて行きたい、と思いました。
そしてなんと、本作中のジョジョの脳内アドルフを演じているのもワイティティ監督。
・・・おそれ入りました!!



そもそも本作、主人公をあえて少年としていますが、
当時の大抵の人々の中にも、アドルフが住み着いていたのではないかと思うのです。
そしてほとんどの人がこのアドルフに支配されていた。
まあ言ってみれば当時の日本人の脳内には天皇陛下が住んでいた、
ということにもなるでしょう。
けれど、アドルフとは無縁の人もいた。
作中ではジョジョのお母さんやクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)ですね。
こういう風にこんな時代でも自分を保っていられる大人、
この描き方がまた素晴らしくかっこいいです。
しかしそのために、悲惨な結果になってしまうわけですが・・・。


ジョジョの、まだ幼く、無知で無垢、
そしてまた純粋でもある「少年」の描かれ方もなんとも素晴らしいし、
それを表現し尽くしたローマンくん、天才です!!



そしてまた、彼に対抗するユダヤ人少女、エルサ。
ジョジョの亡くなった姉の友人という設定で、
少女といってもジョジョよりはかなり年上。
すでに大人の思考ができているのです。
だから、ジョジョが芯からユダヤ人を嫌い憎んでいるのではなく、
単にアドルフにかぶれているだけだとわかっています。
そして、自分を匿っていることがわかれば、ジョジョと母親も罪に問われるのだと、
ジョジョを脅すしたたかさをも身につけています。
そんな辛辣なやりとりが幾度かありながら、
次第にジョジョはユダヤ人も頭にツノなんかなくて、自分と同じ人間だとわかってくるのです。



とにかく最初から最後まで、痺れっぱなし。
極上の(?)ナチス時代物語。

<シネマフロンティアにて>
「ジョジョ・ラビット」
2019年/アメリカ/109分
監督:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、
タイカ・ワイティティ、スカーレット・ヨハンソン、
サム・ロックウェル
着想の独自性★★★★★
満足度★★★★★



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