映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

8月の家族たち

2014年04月26日 | 映画(は行)
豪華キャストはダテじゃない



* * * * * * * * * *

メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、
ユアン・マクレガー、クリス・クーパーに、アビゲイル・ブレスリン、
そしてベネディクト・カンバーバッチ・・・!
この盆と正月が一度に来たような豪華キャストに、
まず驚かされます。
しかし、見れば納得。
決して無駄に豪華なわけではありません。
父親が行方不明となり、
久々に母(メリル・ストリープ)の元に集まった三人の娘とその家族たち。
本作はトレイシー・レックの戯曲が元になっています。
従って舞台はほとんどこの家の中なのですが、そのセリフの応酬がすさまじい。
家族愛? 
そんな甘いモノではありません。
そんな感傷は吹き飛んでしまいます。



まずここの父親は穏やかな人物なのですが
アルコール依存症で、突如失踪。
そしてそのまま自殺をしてしまうのです。

母(メリル・ストリープ)は病で余命幾ばくもない事がわかっているのですが、
そのため薬漬け。
もともと毒舌家のようなのですが、薬のために歯止めがなくなることも。

長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)は、
この母の気性を最も強く受け継いだようで、これがまた強気で口が悪い。
双方真面目でまっすぐで直情的。
その言葉は時にぐっさりと人の心を突き刺します。



次女アイビーは生きることに不器用。
けれど秘密の恋を家族に打ち明けたいと思っています。

三女カレンは自由奔放。
この度はフィアンセと共に現れるのですが、その彼が何やら怪しい・・・。


父の葬儀の後の食事会は、凍りつきそうな毒舌の応酬。
なんともいたたまれなく、
心優しき男性たちはなんとか話題を変えて収拾をつけようと努力するのですが、
女達の迫力には全く太刀打ちできません。
いやー、ほんとにハラハラヒヤヒヤしてしまう、
こんな食事のシーンは全く前代未聞といえましょう。

そして全く思いがけない衝撃の事実が最後に明かされるにいたって、
なるほど、この家族のバラバラな元凶がこれなのか・・・と納得させられるわけです。
こんな家族が「いやあ、やっぱり家族の心は一つ」などと言って
大団円を迎えられるわけがありません。



けれども不思議に後味はそれほど悪くない。
というのも、ラストにジュリア・ロバーツが見せる表情なのです。
ふるさとの地、オクラホマ、オーセージの
なにもなく雄大な風景を目にした時の彼女の表情。


結局はこの故郷、この母のもとで自分は形作られてきた。
どんな結果が待つにしても、それは自分で引き受けるしかないのだという
諦めというか悟りのようなもの。
なんのセリフも解説もありませんが、
ラストのこのシーンが私達の心に訴えかけてくる何かは、
決して嫌なものではありません。


「8月の家族たち」
2013年/アメリカ/121分
監督:ジョン・ウェルズ
原作:トレイシー・レッツ
出演:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、アビゲイル・ブレスリン、ベネディクト・カンバーバッチ

家族の不和度★★★★★
意外性★★★★☆
満足度★★★★★


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