映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

そこのみにて光輝く

2014年04月24日 | 映画(さ行)
底辺で出会う二人



* * * * * * * * * *

「海炭市叙景」に続いて函館市をロケ地とした
佐藤泰志原作のストーリーです。
思い切り地味なストーリーですが、
綾野剛さんの起用で、ミーハー人口をも惹きつけつつ、
でも浮つかない見応えのある作品となっています。


仕事をやめてぶらぶらしていた達夫(綾野剛)は、
粗暴だけれど人懐こい青年拓児(菅田将暉)とパチンコ屋で知り合います。
彼に連れられて彼の家を訪れるのですが、そこはとり残されたような一軒のバラックで、
病で寝たきりの父、
父の世話に疲れ果てた母、
そして一家の生活を支えている姉・千夏(池脇千鶴)がいるのでした。
達夫は千夏に惹かれていくのですが、
千夏は複雑な事情を抱えています・・・。



達夫は山でハッパ作業を行っていたのですが、
ある事故から心に傷を負い、生きる目的を見失っていたのです。
一方千夏は、ろくな仕事もないこの街で、
手っ取り早くお金を得る仕事をしていたわけですが、
そんなことから、自分がまともに人を愛したり結婚したりなどできるわけがないと思い込んでいる。
泥沼に入り込んだような二人が、
反発を繰り返しながら、
しかし、互いに手探りで前に進み始める様がじっくりと描かれています。



舞台が函館というのがやはりいいですね。
ちょっぴり寂れた地方都市。
何よりも海がいい。
そして、綾野剛さんの函館弁がとても自然。
私は子供の頃函館に住んでいたことがあるので、
なんだか懐かしい気がしてしまいました。
綾野剛さんはNHK大河ドラマで会津の殿様を演じていた頃からなんだか気になっていたのですが、
本作で完全にファンになってしまいました。
いわゆるジャニーズ系のかっこよさとはちょっと違う。
でも本作のように陰りのある男がすごく似合う。

ラストの、この夕日を背中から受けて輝いている彼、
その彼の表情がなんとも言えず素敵で、
すべてこのシーンのための映画だったなあ・・・と思えるのです。



それから本作でもう一人光っていたのが拓児。
人懐っこくて、ひょうきんで、単純でまっすぐ。
いいキャラだなあ・・・・。
後先考えず突っ走ってしまうのが玉にキズ。
でもこんな彼だからこそ、
閉めきっていた達夫の心をほんの少しこじ開けることができたのでしょう。
彼は植木屋でバイトしていて、ガラにもなく家で野草を育てていたりします。
しかし「お祭りで売るんだ」というちゃっかり屋の彼。
一見ヤンキーの彼の意外なこういう一面でも楽しめます。
ともあれ、ずっと心に残る作品になると思います。



「そこのみにて光輝く」
2014年/日本/120分
監督:呉美保
原作:佐藤泰志
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平

函館活用度★★★★★
家族の悲惨度★★★★★
満足度★★★★★


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