いないわけではない・・・と
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目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。
ここは死後の世界なのだろうか?
そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。
僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。
しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。
そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)
など全7編を収録。
見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。
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深緑野分さんの短編集。
ルームシェアしていた3人の一人が、故郷へ帰ると行って家を出て行った。
しかし彼の実家から、彼は帰って来なくて連絡も取れない、行方を知らないかとの連絡が。
行方の知れない彼を自分たちは本当に友人だと思っていたのか。
そして意外にも彼はすぐ近くにいて・・・。(伊藤が消えた)
神無月が始まって、「カミサマがあちらに御座す」と兄がいう。
そんな兄の目にできた斑点はどんどん増えていって、妙なモノが見え始める。
そして神無月の終わる晦の日、
兄は「カミサマの手」にひかれて家を出たきり、神無月が終わっても戻らない・・・。(朔日晦日)
紹介文にもあるとおり、人間の本性をあぶり出すダークな短編集となっています。
舞台は現代日本、近未来、異世界・・・
終末の光景も幾度か見せつけられます。
まさに、神も仏もない、救いようのない世界・・・。
あ、でも、本作の題名は「カミサマはそういない」。
英語題で”God is Hard to Find”
つまりカミサマは滅多にいないけれども、
全くいないわけではない、ということですよね。
それを実感するのは、ラストに収録されている「新しい音楽、海賊ラジオ」です。
陸があらかた水没して、人類が細々とかつての文明をつないでしのいでいる世界。
人々の新たな生活の息吹がそこにあるのか・・・?
おそらく本作は計算してラストに持ってきていますよね。
それで良かったです。
でないと読後感があまりにもよろしくないところだった・・・。
<図書館蔵書にて>
「カミサマはそういない」深緑野分 集英社
満足度★★★★☆
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