映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ペインフル・ピアノ 上・下」サラ・パレツキー

2022年12月30日 | 本(ミステリ)

かつての歌姫に何が起こったのか

 

 

 

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おもちゃのピアノを鳴らすホームレスの女性。
声を失った元アーティストの彼女は、殺人の目撃者だった。
ヴィクは捜査を行うが……

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探偵ヴィクのシリーズ、最新刊です。
最近「検屍官」シリーズは出ないけれど、こちらは順調に続きが出るのがありがたい。
著者は今年75歳でしょうか? 
まだまだ頑張って、ヴィクの活躍を続けさせてほしいものです。

 

さて、本巻。

ヴィクはとある公園で、ホームレスの女性がおもちゃのピアノを鳴らしているのを耳にします。
一見めちゃくちゃのようなその調べは、よく聞いてみるとかつてのヒット曲。
なんとそのホームレスは、かつて一世を風靡した歌姫、リディア・ザミーアだったのです。

彼女は4年前に行われた野外コンサートで、銃乱射事件に巻き込まれたのです。
丘の上から犯人が放った銃弾で17人が死亡。
そのうちの一人が彼女の最愛の人、エクトルでした。

リディア自身は無事だったものの、事件と恋人の死のショックで精神が壊れてしまい、
言葉を発することもなくなり、ついにはホームレスとなってしまった。
もちろん彼女を知る人は彼女を病院へ入れて静養させようとしたのですが、
リディアはすぐに病院を飛び出し、さまよい歩くようになってしまったのです。

 

こんな出会いが一つ。
その後、同じこの公園で一人の青年の他殺死体が発見される。
この事件を目撃したかも知れないリディアは行方不明。
そっとリディアを見守っていた男クープは、
突然彼の飼い犬をヴィクのところに押しつけて、彼もまた失踪してしまう。
なにやら、この地区の再開発を巡る動きが根底にあるらしいのだけれど・・・。

いくつかの無関係と思われる出来事が、どこかで繋がっているように思えてならないヴィクは、
例によって満身創痍となりながら調査を続けます。

 

いつもながら浮かび上がってくるのは、資産家や権力者の思い上がった利己的な行動。
まっすぐな正義心を持ってそれに対峙するヴィクは、いつもかっこいいなあ・・・。

 

この度のヴィクは、前作から付き合い始めた考古学者・ピーター・サンセンと
まだうまくいっています。
まだ・・・なんて言うのは悪いけれど、いつもあまりにも仕事にのめり込み、
自分の危険も顧みない彼女の激しさに、男性の方がついて行けなくなってしまうのですよね・・・。
でもまあ、当分は大丈夫でしょう。
ミスタ・コントレーラスと2匹の愛犬も付いていることですし。

 

次作の予告によれば、パンデミックによるロックダウンを経て
日常に戻りつつあるシカゴが舞台とのことですよ。
これも楽しみです。

 

「ペインフル・ピアノ 上・下」サラ・パレツキー 山本やよい訳 ハヤカワ文庫

満足度★★★★☆

 



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