異世代交流のススメ
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一人でこっそりBL(ボーイズ・ラブ)コミックを楽しむ17歳高校生・うらら(芦田愛菜)。
そして、夫に先立たれ、孤独に暮らす75歳・雪(宮本信子)。
ある日、うららがバイトする書店に雪がやって来ます。
美しい表紙にひかれてBLコミックを手に取った雪。
初めてのぞく世界に魅了されます。
雪とうららは、一緒にBLコミックを読んでは語り合い、
立場・年齢を超えて友情を育んでいきます。
うららは、これまで何か一つのことに打ち込むということもなく、どこか自信のないオンナノコ。
そろそろ将来の方向性も考えなくてはならないけれど、何も考えつきません。
そんなうららは、同じ団地の幼馴染みのことが好きなのですが、彼には彼女がいます。
その彼女というのが、すらりとしてロングヘアの美少女。
うららはBL好きのことを周囲に知られるとオタクとか変人とか思われそうで、
ずっと隠してきたのですが、
彼女はちっとも気にせず、BLは面白いと言って周囲の友人達に広めたりもします。
そして、海外留学という目標を定めるや、熱心に勉強を始める。
こんなカッコイイ彼女に、うららはとてもかなわないと思い、
逆にイヤミを言って、さらに自分が傷ついたりしている・・・。
そんなうららを見守るのが雪。
やがて、うららは自分で漫画を書いてコミケに出店することを決意します。
それからがまた大変なのですけれど。
それはさておき、目標を定めてそれに向かって努力することの、
つらいけれどもまた楽しさをも体験することに。
うららが大人への階段を上っていく様が心地よいです。
ここで雪は、変にうららを褒めあげたり過剰に励ましたりもせず
あくまでもそっと見守るという立ち位置なのもいい。
大人としての上から目線ではなくて、あくまでも「友人」。
こういうのが、世代間ギャップを埋めるコツなのかも知れません。
さて、それで雪さんの方。
私なら萩尾望都さんや竹宮恵子さんの、元祖BLコミックに親しんできたので、
今時のBLコミックを見ても驚きもしませんけれど、
雪さんはそれよりももう少し上の世代のようなので、こんな感じなのでしょう。
むしろこういう物に胸をキュンキュンできる
みずみずしい感受性を持っているというのはステキなことです。
そして、大好きなことは自分のうちだけにとどめておくのは惜しい気がして、
誰かに話したくなってしまうのですよね。
その感じ、とてもよく分かります。
そして雪さんがお気に入りのコミック誌の発行年月日を確かめ、
およそ1年半で1冊出ていることを知り、
「ああよかった。次の巻までにはまだ生きていられそう」なんて思う。
こういうのも、ちょっと身に覚えがあったりして。
いくつになったって新しい趣味は始められるし、
そして年齢が全く異なる友人関係というのもいいですね。
そういうのが当たり前の世の中ならいいな。
「メタモルフォーゼの縁側」
2022年/日本/118分
監督:狩山俊輔
原作:鶴谷香央理
脚本:岡田惠和
出演:芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音
青春度★★★★☆
満足度★★★★☆
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