気の持ちようなのか?
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何やら色っぽい話なのかと思いきや、そうではありませんでした。
高層アパートの一室で、一夜を共にしたジョバナとヤーゴ。
その朝、いきなり警報が鳴り響きます。
強い毒性を持ったピンクの雲が一面を覆い、その雲に触れると10秒で死に至るのです。
二人は窓を閉め切り、部屋に引きこもります。
この部屋以外の人々も皆同じ状況。
そして、すぐに消えるだろうと予測されたその雲はいつまでも消えず、
そのままロックダウン生活が続き、いつしか数年が過ぎていきます。
やがて二人の間には男の子・リノが誕生。
リノは家の中という狭い世界ですくすくと成長。
ヤーゴはそんな生活に馴染んでいくのですが、
ジョバナの中では次第に何かが壊れていく・・・。
本作は現実的に見ると、窓を閉めたくらいでこんなにも機密性が保てるはずはないと思えるし、
食料や物資はドローンで届くというのですが、物流がそんなにうまく機能するとも思えない。
第一食料はどこでどのように生産されているのか、
インフラはなぜ支障なく継続されているのか
・・・等々、疑問だらけ。
まあつまり、本作については、そこは目をつぶるというお約束だと思った方がいい。
つまり主たるテーマは、人々が自分の家から一歩も出ることができずに
生き続けなければならなくなったらどうなるのか、ということなんですね。
ピンク・クラウドはいきなりやって来たので、
ジョバナとヤーゴは単に行きずりの関係だったのに、
狭い家の中での同居を余儀なくされてしまいます。
ジョバナの娘は、友人の家に遊びに行っていたので、
家族でもないのにその家で生きていかなければならなくなる。
ヤーゴの老いた父は、介護人とともに家に閉じこもることに・・・。
ロックダウンの生活でも、ネットを介して実の家族や友人達と毎日のように話をすることはできます。
けれど、実際に顔を合わせるのは毎日毎日同じ人。
もしくはたった一人で暮らさなければならない人も多いでしょう。
まるで金魚鉢の中で一生を送らなければならない金魚のよう。
しかし、そんな中で生まれた子どもは、始めからそんなものだと思っている。
むしろこの子がいきなり外に解放されたらどうなるのか、考えるとそれも恐い。
でも、彼はネットで外の世界のことはよく知ってはいるのですが。
やはり問題は、「閉じ込められた」感をぬぐいされない大人達。
その状況をまあ、仕方ない、でも一応平和に生きては行けると納得できるか、
不満ばかりを大きく膨らませていくのか、人によるわけで・・・。
本作、コロナ禍以前に作られた作品で、
まるでコロナ禍のロックダウン生活を予見したような内容であることに
注目を浴びているわけです。
しかし、私は思うのですが、家の中だけとはいいえないまでも
自分自身限られた地域内で、限られた人々との交流だけで生きている
と言ってもいいのかも知れない・・・。
多くの人は、そんなものなのでは?
コロナ禍の引きこもり生活も、私はそこまで苦痛ではなかったしな。
一生このまま、とは思っていなかったからかな?
まあ色々と考えさせられる作品ではあります。
<サツゲキにて>
「ピンク・クラウド」
2020年/ブラジル/103分
監督・脚本:イウリ・ジェルパーゼ
出演:ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、
カヤ・ホドリゲス、ジルレイ・ブラジウ・パエス
パニック度★★☆☆☆
満足度★★★☆☆
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