映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ミツバチと私

2025年03月05日 | 映画(ま行)

なぜ男らしくないといけないの?

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夏のバカンスで、フランスのバスク地方から
母の実家のあるスペインの片田舎へやって来た家族。
末息子、8歳のアイトールは、男の子の体なのですが、
女の子が好きそうなものばかり気になってしまうのです。
肩まで伸びた髪は絶対切りたくないし、爪はマニュキアで彩っている。
そんな風なので、学校に友達はいなくて、行きたくない。
自分の性自認が分からず、違和感と居心地の悪さを抱えているのです。

母は表向き、自分の好きなようにすればいいと言っているのですが、
このまま女性になりたいと言うようになるのでは・・・?と不安でならない。
父はもうほとんど、この子はおかしいと思っている。

スペインの田舎の人々は保守的な考えの人が多くて、
「甘やかしてはダメ」とか「早くちゃんと男の子らしくさせなさい」などと言う。
そんな中でただ1人、ミツバチを飼っている叔母だけが、
「自分らしくいていいんだよ」と言ってくれるのです。

よく分からないのですが、多分アイトールと言う名前は、いかにも男の子らしい名前なのでしょう。
彼はそういう自分の名前に違和感を持っていて、
本当は「セシル」と呼ばれたいと思っている。
けれどそんな風に言うと、家族も含めて周囲の人々は戸惑い、
困ったような、問題児を見るような雰囲気になってしまう。
そうしたことによる罪悪感も彼は抱えていて、
自分らしくあると言うのも、本当に大変なのです。

今は、LGBTの考えも広まって来てはいますが、
宗教や国によってはまったく受け入れられないところも多く、
先進国でも政治的に逆行の向きさえあったりする。
口では受け入れるようなことを言う人も、心底では理解していなかったり・・・。
この先もこの考えが世界中に素直に受け入れられるような気がしない・・・。
ではあっても、自分が自分らしく在ろうとすることは大事だし、
周囲の理解もまた重要なんでしょうね。

そんな“今”を、うまく捉えた作品だと思います。

 

余談ではありますが、小説家、馳星周さんが自身のブログで紹介していますが、
氏の現在の愛犬の名前がアイトールであります。

 

<WOWOW視聴にて>

「ミツバチと私」

2023年/スペイン/128分

監督・脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

出演:ソフィア・オテロ、パトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・カバラン、イツィアル・ルビオ

LGBTの今度★★★★☆

満足度★★★★☆



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