映画と本の『たんぽぽ館』

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利休にたずねよ

2013年12月23日 | 映画(ら行)
「美」を追求する人



* * * * * * * * * *

千利休。
茶道の大家としてその名はよく知られていますが、
その悲惨な最後を知る人はあまりいないのではないでしょうか。
かくいう私は、NHKの大河ドラマ「江」で初めて知ったのですが。
(と言うか、知らなかったのは私だけ?)



千利休(市川海老蔵)は豊臣秀吉(大森南朋)に引き立てられ、
天下一の宗匠として名をはせますが、
やがてその秀吉に疎まれるようになり、
武士でないにもかかわらず切腹をすることになります。
今作はどうしてそのようなことになってしまったのか、
ということで、千利休のたどった年月を追っていきます。
でも私、本当はその利休と秀吉の心理的・政治的確執・葛藤のようなものを期待していたのですが、
ここではそれは薄いのです。
利休の人生を貫いていたのはひたすらに「美の追求」なんですね。
他のことは実はどうでもいいというか、興味が無い。

そして又もう一つ、彼には心の中に秘めたある人への“思い”がある。
彼は若き日、高麗からさらわれてきた美しい女性に心奪われるのですが、
これがどうしようもない悲恋に終わってしまう。
彼の“美”への探求はそこが原点。
したがって、朝鮮征伐を目論む秀吉は、
大切な思い出の人の故郷を踏みにじる許せない男。
そんな男におべんちゃらなど使えない。
自ら死して抗議をするという意味があったのでしょう。
武士ではなくとも、切腹という死に方が、
彼にとっての「美意識」を満足させるものだったのです。
まあ、そういうストーリーなので、
ここでは秀吉との感情的確執・葛藤というのはあまりクローズアップされません。
そういう点でいえば、「江」ではよく描けていたと思います。



さてさて、それにしても、海老蔵さんはさすがと言わざるを得ません。
その立ち居振る舞いや所作の美しいこと。
お茶をたてるにも「おもてなし」の心で、
格式張らず動作も自然で滑らか。
なんというか、こういうふうにお茶を出されたら、
こちらはお茶の作法など何も知らなくても、
ただ自然に味わえばいいのだなあ・・・
と、思える気がするんですね。
ステキでした。


また、市川團十郎さんが、利休のお師匠さん役。
海老蔵さんとはこれが最後の親子共演となったわけですが、
役柄もピッタリで、記念すべき作品ともなっています。



ちょっぴり笑ってしまったのは、信長役が伊勢谷友介さん。
先の「清須会議」では信長の血筋が皆「鼻筋が通っている」ということで、
伊勢谷友介さんもその血筋の役だったわけですが、
ここではそのものズバリの信長役。
信長さんは鼻筋の通ったハンサムさんだったようですね・・・。



「利休にたずねよ」
2013年/日本/123分
監督:田中光敏
原作:山本兼一
出演:市川海老蔵、中谷美紀、市川團十郎、伊勢谷友介、大森南朋


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