幸せな時間をありがとう
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「ニューシネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、
師であり友でもある映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネに迫ったドキュメンタリー。
エンニオ・モリコーネは1960年代以来500作品以上の映画・テレビの音楽を手がけ、
2020年7月に亡くなっています。
本作のように直接カメラの前でモリコーネが自身を語るというのは極めて稀なこと。
それも、ジュゼッペ・トルナトーレ監督だからこそ、だったのでしょう。
モリコーネは、本来は父の後を継いで、トランペット奏者を目指していたそうです。
しかし音楽学校での成績は凡庸。
教師が、作曲の方が向いているのでは?と言うので、
そちらの道を歩み始めたのだとか。
・・・等々、モリコーネの映画音楽との出会い以前の話もたっぷり語られたそのあとに、
いよいよ映画との出会いがあって、
そしてあの、「荒野の用心棒」のテーマ曲が流れた時には思わず泣きそうになりました。
なんとも独特で鮮烈。
当時大ヒットとなったのも無理はありません。
ついでにそこで映し出された若き日のクリント・イーストウッドも、
シビれるほどにカッコいいなあ・・・!!
また、見たくなってしまいました。
他にもニューシネマ・パラダイス、アンタッチャブル等々、
45作品の傑作から選ばれた名場面が紹介されています。
そして、それぞれの著名な監督やプロデューサー、音楽家へのインタビューを通じて、
モリコーネの偉業を振り返ります。
驚くべきはモリコーネの作曲風景。
ピアノなんか使わないのですね。
ペンと五線紙さえあればいい。
音楽家とはそういうモノなのか・・・
ところがモリコーネは、全世界の人々にその音楽を愛され、その名を馳せながらも、
アカデミックの音楽界からはほとんど無視されていたとのこと。
人気がありすぎるが故の妬みもあったのかもしれません。
そんな音楽は正当な「音楽」ではない、外道だ・・・などと、
いかにも“権威” ある者が言いそうです。
そのため、モリコーネにも若干の劣等感があったようで・・・。
でも現在、モリコーネの音楽が様々なアーティストにアレンジされて演奏されたり、
また、サブスクの影響もあるのでしょう、
若い人たちにもどんどん受け入れられているといいます。
今や音楽はジャンルも時代も超えてボーダーレス。
やっと時代がモリコーネに追いついたのかも知れません。
モリコーネの音楽と映像の結びつきがどれほどわたし達の心を揺り動かしたことか。
幸せな時間をありがとう、と言いたい。
結構長い作品なのですが、退屈はしません。
<シアターキノにて>
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」
2021年/イタリア/157分
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:エンニオ・モリコーネ、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、ウォン・カーウァイ
映画音楽のきらめき度★★★★★
映画の歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★☆
今では映画館で映画を見ることは皆無ですが、
年寄りの青春時代は、映画が一番の楽しみでした。
西部劇が特に大好きでしたが、その後マカロニウエスタンと称してセルジオ・レオーネ監督と共にモリコーネの名声が高まり忘れられない人です。
今でも聴く音楽といえば1960年代の映画音楽ばかりです、
大学病院に通院して点滴治療で時間を過ごす時は、昔のウオークマンで「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」を聞いて時間を過ごしています。
映画っていいものですね、、
思わず思い出してしまいました。
ウォークマンで、と言うのがシビれますね。
「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」のテーマ曲は、わたし達の世代にはすっかり血肉になっている、ということをこのたび改めて認識しました。
前衛的な音楽を経験していたから、銃声や鞭の音に、口笛で奏でるというメロディを編み出したのですね。^^
まさに、クラシックばかりでなく前衛的な現代音楽の経験によって道が開かれたのですね。様々な経験が自身の栄養になるというのはいいですね。