映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人生はビギナーズ

2012年03月18日 | 映画(さ行)
人生は皆ビギナーズ。75歳でも38歳でも。



                      * * * * * * * * * *

この作品、一見大きな起伏もなく淡々と進みます。
38歳独身のオリバー。
彼は父を亡くした喪失感で、ずっと落ち込んでいます。
その父は、母を亡くした後、なんと75歳にしてゲイであることをカミングアウト。
それまで美術館の仕事一筋で、面白みのない人物と思われていた父が、
ゲイの仲間と付き合い、自分らしく生きることで、どんどん元気に明るくなっていく。
しかし、まもなく父はガンで余命宣告を受けるのですが、
残された人生を思う存分自分らしく、思うがままに過ごし、満足して亡くなっていくのです。



オリバーは“ゲイ”そのものについては、どうしても馴染めず理解はできないけれども、
父が心から生を楽しんでいることは理解できるし、
そのことに応援もしてきたのでした。
父を見送るという大仕事の後のエアポケットで、
彼自身の人生の目標を見失い、孤独に落ち込んでいたそんな時、
彼は一人の女性と出会います。


この作品は、彼と彼女の恋と心の再生を描くのですが、
その時すでに父は亡くなっており、
父のエピソードは現在のオリバーの回想として挿入されています。
人との関わりの中で、ナマの自分をすべてさらけ出す事ができない。
今一歩自分から踏み出せない。
そんなオリバーが、父の生き方を少しずつ噛み締め、自分のものにしていくようです。
でも、オリバーのこんな雰囲気は好きです。
なんだか自分にとても近いところにいるような気がします。



彼が本音を話せるのは、亡き父の残した愛犬アーサー。
さみしがり屋のこの犬は、いつもいつもオリバーにくっついて歩くし、
留守にしようとするとくんくん鳴くので、結局は連れ歩くことになる。
犬好きにはたまらないシーンの数々。
しかも、このアーサーの思いが字幕で出るのです。
「150も言葉がわかるけど、話せないんだよ」などというふうに・・・。
オリバーは、自分の本音をいつもアーサーに話すわけです。
そして初めてであったときの彼女アナは、喉頭炎とかで、話すことができませんでした。
勢い、オリバーが多く話すことになりますよね。
彼女は彼の問いに筆談で答えるのみ。
犬に語りかけるのと同様、
ゆっくりとまずは自分の気持ちを語る。
本音で語る。
そういうことがこの恋においては大事だったのかなあ
・・・などと思いました。



あの父にしてようやく自分の思い通りに生き始めたのが75歳。
38歳の恋だって決して遅くはない。
人生は一度きりだから、結局は誰もがビギナーズということなんですね。
大きな起伏がない割には、私はどのシーンも好きで、楽しませてもらいました。


クリストファー・プラマーは、今作でアカデミー助演男優賞を82歳最年長記録で受賞。
いい味出てます。
ユアン・マクレガーは今まで見た中で一番好きかもしれません。
そして、ジャック・ラッセル・テリアのアーサーのナイスなこと!
(本名?はコスモというのだそうですが。)

まもなく日本でも公開となるアカデミー賞受賞の「アーティスト」にもジャック・ラッセル・テリアが登場し、
その演技力が話題となっています。
もしかして同じ犬?と思ったのですが、別犬でした。
そちらもとても楽しみです。
次のフェルト犬は、ジャック・ラッセル・テリアに決まりです。

2010年/アメリカ/105分
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、ゴラン・ビシュニック



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
犬のアーサー (こに)
2012-03-19 20:26:32
良かったですよね。
木漏れ日の家で、と同様、大事な出演者(犬)でしたね。
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本音 (たんぽぽ)
2012-03-20 19:31:29
>こにさま
一人暮らしでは、犬を相手に本音を語るというシーンが作りやすいのでしょうね。
映画に登場する動物たちの演技には本当に感心してしまいます。
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