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「金春屋ゴメス」西條奈加

2021年05月04日 | 本(SF・ファンタジー)

「江戸国」と流行病

 

 

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近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。
競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。
身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、
極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!
ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤痢」の正体を
突き止めることを命じられた辰次郎は――。
「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。

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西條奈加さんのデビュー作にして日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
ファンとしてはやはりこれは読んでおかなくては、と思いまして。
ファンタジーということで、何やら型破りな設定なのです。

 

近未来の日本で、「江戸」が独立したという・・・。
その昔の「江戸」が土地ごとタイムスリップしてきたというのではなく、
近代文明を拒否した人々が、電気のない江戸時代の生活をしようと
「江戸国」を立ち上げたと言う。
そんな物好きな・・・とも思いますが、
例えばアメリカにおけるアーミッシュのように、
昔ながらの自給自足の生活に憧れるというのはわかります。
テーマパークなら観光客で賑わうところですが、
この「江戸」は鎖国体制を敷いていて、
ごく特別な許可を得たわずかな人しか出入国はかないません。

 

と、説明ばかり長くなりましたが、
本作は大学生の辰次郎が入国を許可され、江戸入りするところから始まります。
彼はこの江戸で生まれたのですが、幼少時に大病を患い、
江戸内では治療が難しいと、泣く泣く両親が江戸を離れて日本へ移住していたのでした。
江戸を一度離れると再び入国できないという決まりがあったのです。

実はその幼い辰次郎がかかった病が問題で、
なんと近年江戸でまたその病が発生したという。
致死率ほぼ100%。
なのになぜ辰次郎は生き残っているのか。
そういう謎を解いていく物語です。

ところで、題名の「金春屋(こんぱるや)ゴメス」というのはお奉行様のこと。
辰次郎はこのお奉行の元に世話になることになったのですが、
巨大で横暴でほとんど怪物めいた人物。
大丈夫なのか、辰次郎・・・・。

 

なんともこれがデビュー作とは信じられない、楽しい作品なのでした。
ファンタジーにして時代小説でもある。
なるほど、西條奈加さんのいかにもこれは原点なのですね。

 

本作には続編もありまして、さっそく読むことにしましょう!

「金春屋ゴメス」西條奈加 新潮文庫

満足度★★★★☆

 

 



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