映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

偽りなき者

2013年04月17日 | 映画(あ行)
真実を抱く者は強い



            * * * * * * * * *

親友テオの娘クララの作り話が元で、
変質者の烙印を押されてしまったルーカス。
いくら彼が真実を叫んでも、人々は先入観に凝り固まり聞く耳を持ちません。
仕事も友人も失い、
石を投げつけられたり、店での買い物を断られたり・・・、
事態はなすすべもなく悪化を辿ります。





全く理不尽な出来事。
一方的なある一人の発言から始まって、
いわれない中傷や非難が集中してしまうという、
昨今時々耳にする恐ろしい風潮を思い起こします。
こんな時には、本人が何をいっても聞き入れてはもらえない。
作中では、クララが真実を告げてすらも
人々はそれをも聞き入れようとしないのです。
こんな困難をルーカスはどのように乗り越えようとするのか・・・。
息詰まる思いで彼の行動を見守ってしまいました。


しかしこんな中で、彼の息子だけは彼の無実を信じていました。
これは心強いですね。

ハリウッド映画なら、まず息子から見放されたりするのですが・・・。
ルーカスは幼稚園の職員なのです。
実に子供の心をひくのが上手い。
そんなところを見ると、たぶん息子マルクスとも、
小さい時から信頼関係で結ばれていたであろうことが伺えるのです。
そもそも、クララのウソも、実はルーカスを「好き」なことの裏返しでしたよね。



とにかく実証もないことなので、
警察に出頭したルーカスはすぐに放免されるのですが、
町の人達は納得しないのです・・・。
彼に向けられる嫌がらせと言うか、すでに“悪意”ですが、それは深まるばかり。
実際こんなことがあったら、すっかり自暴自棄になってしまいそうです。
嫌になって町を去るという選択もあったかも。
けれど“自分は無罪である”というプライドが彼を支え続けたのでしょう。
歯を食いしばっても日常の生活を続けようと、彼は思ったのでしょう。
また、彼の怒りはクララに向かったりはしません。
大人だなあ・・・。
はい、こういうのを本当の大人というのだと思います。
でも、彼が耐えられなかったのは親友テオに信じてもらえなかったこと。
クリスマスの教会で、彼の強い視線がテオを射抜きます。



結局は真実を抱くものが強いのでしょう。
けれども、一度芽生えた悪意は容易に消えるものではないという
ヒンヤリとした感触を残しつつ・・・。
非常に見応えのある作品でした。

P.S. ワンちゃんが・・・(T_T)

「偽りなき者」
2012年/デンマーク/115分
監督:トマス・ヴィンターベア
脚本:トマス・ヴィンターベア、トビアス・リンホルム
出演:マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、アニカ・ビタコプ、ラセ・フォーゲルストラム、スーセ・ウォルド
理不尽度★★★★★
満足度★★★★☆


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2 コメント

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映画でない話歓迎 (たんぽぽ)
2013-10-25 23:50:33
>小米花さま
コメントどうもありがとうございます。
こちらこそ勝手にトラックバックしてしまって申し訳ありません。
コーギーは以前うちにいたのですが、今はもう居ないのです。でも、映画などに出てくる犬達が愛らしくて、いつもじっと見てしまいます。だからそういうシーンは辛くて・・・。
柴犬もいいですね。いま、大好きなMaru in Michigan のブログのおかげで、一番好きな犬種かも知れません。
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今晩は~ (小米花)
2013-10-25 22:51:40
TBをありがとうございます。

P.S. ワンちゃんが・・・(T_T)
そうでしたね・・・。

サイドリンクにコーギーのカレンダーがありますね。
私は柴犬と暮らしています。
ワンのああいうシーンは思わず目をつぶってしまって
見てられないですネ・・・。
あ、映画の話しでなくてスミマセン。<(_ _)>
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