映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

十一人の賊軍

2024年11月04日 | 映画(さ行)

生き残るために

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戊辰戦争時を舞台とするストーリー。
私、かねてからの会津贔屓ですので、賊軍の話、大歓迎と思って見始めましたが、
これはそういうものとはまた別の話。

1868年、旧幕府軍と新政府軍(官軍)が争いを繰り広げていたわけですが、
越後の新発田(しばた)藩は、どちらにつくべきか、決断がつかずにいたのです。

奥羽越列藩同盟に加わっていた長岡藩は、
当然新発田藩も加わるもはずとして圧力をかけてきますが、
冷静に状況を見れば官軍の方が有利。
そのため、官軍と通じようとしているところへ、
長岡藩士がこちらの決断を確かめに来る・・・。

切羽詰まった溝口内匠(阿部サダヲ)は、ある計画を立てます。

さて一方、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害し、
死罪を言い渡された政(山田孝之)やその他の罪人たちは、
新発田藩士・入江(野村周平)や鷲尾(仲野太賀)から、こんな話を持ちかけられます。

これからやってくる官軍から砦を守り抜けば、無罪放免とする、と。

どうせこのままなら死罪で終わり。
それならば、なんとかやってみよう、と決意する罪人たち。

官軍につくか、それとも旧幕府軍か・・・という話、
少し前にも見たなあ・・・と思い起こせば、
それは長岡藩の内情を描く「峠 最後のサムライ」という作品でした。
役所広司さん演ずる藩士が状況は官軍に有利だけれど、
奥羽越列藩同盟の義理の方を重んじ、立派に戦って死んでいく・・・と、
武士の滅びの美を描いたものでしたが、
その時にいみじくも私は
「どんなにみっともなくても、生き残る人間くささも嫌いじゃない」
と書き記していました・・・。

で、本作はまさに、何が何でも生き残ってやろうともがく者たちの物語なのです。

彼ら咎人たちは、つまり新発田藩家老にとって使い捨てのコマにしか過ぎません。
そうした真実を知った彼らは、もう官軍も賊軍も、正義も、何も関係ない。
とにかく生き抜こうともがくのです。

死罪を申し受けた罪人は政ら11人。
でもうち一人は女性で、実際に戦闘に加わるわけではありません。
では本当の11人目は誰なのか? 
そこがミソであります。

武士ではない罪人たち(武士も含まれてはいますが)の戦いぶりは
決してカッコ良くはないのですが、何しろ迫力があります。
血みどろ、汗みどろ・・・。
一人、また一人と倒れていきます・・・。
壮絶。

とにかく息を潜めて見入るのみ・・・。

 

話は変わりますが、この日は久しぶりにサツゲキにて鑑賞。
でも、どうしてこの頃ここに足が遠のいていたのか分った気がしました。
あまりにも空いているので、居心地が悪いのです・・・。
だいじょうぶなのか、サツゲキさん・・・。

 

<サツゲキにて>

「十一人の賊軍」

2024年/日本/155分

監督:白石和彌

原案:笠原和夫

脚本:池上純哉

出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、岡山天音、一ノ瀬颯、野村周平、玉木宏、阿部サダヲ

 

血まみれ度★★★★☆

迫力度★★★★☆

満足度★★★★★

 


悲しみの皮

2024年11月02日 | 映画(か行)

人の欲望に際限はない

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夢かうつつか、ちょっと不思議な雰囲気のあるストーリー。

 

1832年、22歳のラファエル。
ギャンブルですべてを失い、自殺寸前。
そんな時に、骨董屋の店主から奇妙なものを勧められます。

それは「悲しみの皮」といって、願ったことは何でもかなえられるけれど、
その都度皮は縮んでいって、それと同時に、
その者の人生も縮んでいく、つまり寿命が短くなるということ・・・。

ラファエルは半信半疑ながらもそれを受け取り、願いを口にします。
すると、瞬く間に富と名誉を手に入れたラファエル。
「悲しみの皮」は確かに縮んでいるけれど、まだまだ余力はありそうです。
そして、ラファエルが次に願ったのは・・・。

 

人の欲望はどこまでも果てしがない、という話ではありますが、
ラストは勧善懲悪的な感じではなくてちょっと美しいものでした・・・。
お約束通り、ラファエルは短命に終わってしまうわけではありますが。

 

私が疑問に思ったのは、とある女性に自分を愛してほしいと願い、
実際に女性に愛されるようになったとして、
それは自然なことではなくて、魔法の力でねじ曲げられたものだと、
悩むことはないのだろうか?ということ。
幾分かでもそのような疑惑を抱くことがあっても良さそうな気がしますが、
本作中のラファエルはまったくそんなことは思わず、浮かれていました。
ま、脳天気である方が幸せではありますね。

 

とりあえず莫大な財産と名声を手に入れたら、
もう思い残すことなどなさそうにも思えますが、
まことに、人の欲望に際限はない。

 

<Amazon prime videoにて>

「悲しみの皮」

2010年/フランス/96分

監督:アラン・ベルリネール

原作:オノレ・ド・バルザック

出演:トーマス・クーマン、アナベル・エトマン、ジュリアン・オノレ、ミレーヌ・ジャンパノイ

欲望度★★★★★

教訓度★★★★☆

満足度★★★☆☆


宮本から君へ

2024年11月01日 | 映画(ま行)

熱血バカ

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新井英樹さんの人気コミックの実写映画化。

 

正義感が強く熱血まっしぐらなれど、生きることに超不器用な宮本浩(池松壮亮)。
そんな彼が、会社の先輩の仕事仲間である中野靖子(蒼井優)と恋仲になります。
ある日、靖子の部屋に招かれますが、
そこへやって来たのが靖子のモトカレ・裕二(井浦新)。
裕二は靖子が宮本と仲良くなっているのに怒り、靖子に手を上げてしまいます。
しかし、宮本は「この女は俺が守る!」と宣言。
そのことで靖子と宮本は心から結ばれたのでした。

そんなある時、宮本は仕事の取引先との飲み会に靖子を伴います。
その取引相手は完璧に体育会系的な面々。
言うことがすべてセクハラ、パワハラっぽいのですが、
靖子は軽くいなして見せます。
そしてその中の1人の息子タクマと親しくなり、
その後、靖子の部屋に宮本とタクマがやって来ます。
そして宮本は酔い潰れてグッスリ寝入ってしまい・・・。

なんともイヤな事件が起きます。

「俺が守る!」と宣言しておきながら、何もできなかった宮本。
傷つき打ちひしがれてしまう靖子。

タクマは恐ろしくガタイがよくて、
まともに向き合ってもとても宮本に分がありそうに思えません。
けれど宮本には火がついてしまう。
思い込んだら命がけ。
熱血バカ。

池松壮亮さんのこういう役って、めずらしいのではないでしょうか。
でも、こんなバカみたいにまっすぐなヤツ、嫌いじゃないですね。
ホントに、バカな人・・・と思いつつ、振り切れない女心も分るなあ・・・。

WOWOW視聴にて

「宮本から君へ」

2019年/日本/129分

監督:真利子哲也

原作:新井英樹

出演:池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、ピエール瀧

 

暴力度★★★★★

単純バカ度★★★★☆

満足度★★★.5