ステージおきたま

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無理は無理:高校演劇東北大会殴り書き③

2008-12-26 22:06:48 | 演劇

 さて、東北大会殴り書きシリーズも最終回だ。大会で気になったこと、気に入ったこと、幾つか書いて仕舞いとしよう。

 まず、作品でうーむ、これはいかがなものか?って思ったのは、とっかかりの設定に随分無理のある作品が多いなぁってこと。単位不足の生徒を教育相談員にして卒業認定に持ちこもうって作品、これってありえねー!って最初から引いてしまう。教育相談なんて、僕だってできれば近づきたくない分野だもの。専門性も要求されるし、信頼されるってことも絶対条件だし、アドバイスには広い視野と相談者をよっくと理解してなけりゃならない。さらに、プライバシーの保護の問題もあるしね、とても生徒に任せられる役割ではないと思う。ところが、この設定からすべてが始まるってわけだ。

 さらに、バイクで退学を迫られる女子校生の話しも、ええーっ!そんなんあり?って部分が基本設定の部分にどかっと腰を下ろしている。その生徒がバイクに乗っていたのを目撃した先生が、実はど近眼で、しかも、そのとき酔っぱらっていて、さらに、飲み屋でぼったくりにあってむしゃくしゃしていたところでって、おいおい、そんな奴の証言、だれがまともに取り上げるって言うんだよ。

 こんなのもあった。三流大学歯学部の推薦入学面接会場、やる気のない面接官がただ一人で受験生の相手、しかも、理事長からは定員割れだから絶対入学させろと矢の催促。そこで、無理矢理入れるための面接が始まる、とまうあ、こういう具合だ。まず、三流だろうが、五流だろうが、腐っても歯学部でしょ、こんなことってあんの?仮に有ったとして、だったら、理事長やら教授やらずらっと居並んでもったいつけるもんじゃないの?少なくともやる気のない職員一人に任すなんて、まずありえねー!って話しだよね。

 と、まあ、こういった、ええっ!とか、おいおい!とか、ちょっと待て!っていった設定や展開がやたら多いと感じた。どうしてこうなるかって言うと、シチュエーション喜劇を作りたいからなんだよね。三谷幸喜お得意のシチュエーション喜劇。奇妙に捩れた設定ゆえに吹き出す笑い。先生と生徒の立場が入れ替わるとか、合格させたい面接官と不合格になりたい受験生とか。これはたしかに美味しいんだよ。僕もそんな作品作ったことがある。そのときは身代わりのお見合いだったけど、僕にしちゃあ笑いがとれていた。

 で、こういう喜劇的設定作るとき大切なことは、見てる人が許せる範囲にこじつけるってことなんじゃないかと思うんだ。うーん、ちょっと無理があるけど、目をつぶろう!とか、まあ、その後の笑いが面白いから勘弁しよう!とか。それなら、問題ないんじゃないの?観客ほとんど納得してたから、って言うかもしれない。でも、そこが実は一番問題なんじゃないだろうか。

 つまりこういうことだ。高校生は笑いに対して寛容すぎる!ってこと。笑えれば許す。少しばかり筋立てに無理があっても、面白ければ認めよう。いやいや、最初から筋立てのリアリティなんて気にしていないじゃないだろうか。まあ、その気持ちはわからないわけじゃない。どたばたとかナンセンスとかだって立派なもんだから。僕も毎年子どもミュージカルでそんなの書いてるし。

 でもね、その笑いに対する脇の甘さが、高校演劇固有の世界を形作っているように感じるんだ。どことなくなあなあの世界をね。三谷さんなんか、この点ほんと苦労していると思う。最新映画の『トワイライトタイム』なんて、もう、その苦労がそちこちに透けて見えて、それがまた、なんとも笑いを誘う、といった作りになっていた。笑いたい観客に笑わせたい作者。この馴れ合いをどっかで断ち切らないとね。

 次に感心したこと。高校生ってやるもんだなって、なんか、高校教師が言うことじゃないね。でも、正直、今回の大会では高校生の底力を見せてもらえた。

 一つは、スタッフの生徒たち。生徒たちが舞台袖の綱元にまで入って仕事していたのには驚いた。スタッフと出場校との打ち合わせも生徒中心で進んでいたし、とてもとてもスタッフさんのお手伝いなんて域を超えていた。しっかりと指導して、信頼して任せれば、十分にこれくらいの仕事は出来るんだってこと、よーっくと教わった。

 それと生徒講評委員会。これも実に見事だった。一つ一つの舞台について的確に批評し、遠慮することなく意見を述べていた。その、暖かく心のこもった講評には、上演した立場として、ほんと、救われた思いがした。また、代表生徒の、もっともっと勉強しなくては、という謙虚な発言、分析的にならずに全体を感じ取る必要性という反省など、そのまま、置農の部員たちに何度も言って聞かせた。

 あと、このブログ見てる人が結構いるって知ったことも、ちょっと意外、かんなし!嬉しい出来事だったかな。ということで、東北大会については、これにて!これにて!

コメント (9)
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