ステージおきたま

無農薬百姓33年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『パンダの復讐』

2010-11-10 21:43:29 | 劇評

惜しくも東北大会出場を逃したけれど、いやあ、あの舞台是非出したかったよなぁってって学校が幾つかあった。そのうちの一つ酒田東高校の『パンダの復讐』作:酒田東高演劇部+木村麻由子について、観劇直後に書いた感想、劇評を上げておこう。

優れた書き手だって聞いていた。T高校のK先生が言うんだから間違いないと思っていた。

期待違わず、面白い作品だった。

まずプロットの斬新さに感心した。取り壊されることになった児童公園のパンダとウマの遊具が、最後の思いとして高校生二人の心をつなぐお手伝いをする。これまでも幽霊とかがこんな狂言回しの役を仰せつかることがあったが、なんとパンダとウマの遊具とは!まずこの目の付け所の突拍子無さが凄い。この二人を据えたこととで、全体にコミカルなやりとりが可能となったし、観客の興味を否応なく引きつけた。

もう一つの注目点は、自殺サイトの言葉のやりとりから身近な人たちの思いやりに気づくという構造だ。今そのものだなぁぁぁ。こういうものは若い作者だから書けるんだろ。こういう仕掛けの新しさが役者の演技の確かさに支えられて、笑いと共感の濃い一時間を生み出していた。再起不能のけがをしてチームのエースから転落し落ち込む男の子とその少年への片思いで悩み傷つく女の子。もしも、この二つの工夫がなかったらありきたりの傷つく若者の再生物語になっていただろう。

ただ、装置やシーンの作り方には物足りないものを感じた。クリーム色の6尺パネルが周囲を囲み放し、中央に1間パネルのない部分があって、そこが非現実な登場者たちの出入り口。これがそのまま少年の部屋にも少女の部屋にも教室にも体育館にもなる。照明によるバックアップはあるものの、装置がシーン作りの足をひっぱっていた。特に、体育館のシーンなどクライマックスシーンなわけで、それなりの作り替えが必要なのじゃないだろうか。例えば、リバーシブルの両面パネルなんか作れば、もっとスムーズに異空間を作り出せたんじゃないだろうか。少年の勉強机が教卓だったのも意図がわからない。ましてそれをキャスターでがらがらと出し入れしていたのにはちょっと興ざめした。もっとも使っているノートパソコンがアップルでふたの中央が青く輝いていたのはなかなか効果的だった。

自殺を思い止まらせようとする少女が実はその少年への片思いに悩んでいたんだってのはよく考えるとあまりに偶然過ぎるのだが、パンダとウマのマジックにはめられて、まあ、それもありかと納得してしまった。やはり、パンダの力、ウマの勝利ってことなのだろう。

コメント
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