ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

あの日、あなたが校舎を燃やした?

2010-11-11 23:11:55 | 劇評

山形西高、K先生の脚本だ。60数年前実際にあった母校の放火事件を題材した作品。丹念な取材を基にして事件の経過を解き明かし推理している。謎解きものとしてのサスペンス感。しかも冤罪の可能性も臭ってきて最後まで引きつけられた。権威主義の学校当局となんとか犯人を挙げたい警察権力とのもたれ合いの構図なんか、今の時代にも通じるテーマで興味がつきない。

事実とフィクションとのせめぎ合いもまた興味をそそられた。演劇部員が母校の事件を調査しつつ劇に仕上げていくという構造も二層構造になっていて効果的だった。どこまでが真実でどこからがフィクションなのか、常に緊張感を伴いつつ場面が展開した。それを推測しつつ舞台を追っていくという不思議な劇体験をさせてもらった。何より、時間に埋もれた真実を追究していく姿勢、解き明かしたいとの執着と言ってもいい熱意、作者の静かだが頑として動ずることのない立ち姿に圧倒された。

 このような作品がかつて高校演劇にあっただろうか?しかも母校の歴史だ。それも汚点。誰でもが書ける作品ではない。空間的にも時間的にもたまたま巡り合わせた幸運な人間だけに許された僥倖。それをしっかりとつかみ取り追求して行ったK先生の膂力に敬意を表したい。

ただ、断然面白いこの題材をもっと生かす方法はあったのではないか。例えば、劇中劇がすべて練習風景として演じられたこと。横で部員たちが見ているという形のため、どうしても劇中劇に引き込まれにくかった。劇中劇の際の役者の演技も練習ということでやや迫真力を欠いていたように感じられた。例えば、冒頭を劇中劇の放火シーンから始めて、それ自体が劇本体であるかのように見せて引き込むとか、劇中劇シーンを独立の明かりの中で(場合によっては別ステージで)演じさせて、部員たちを見せないといった工夫があったのではないか。

それともう一点残念な気がしたのは、演劇部員たちの今の姿があまり鮮明ではなかったことだ。なんか昔の女学校の生徒たちなのか?と錯覚してしまうことも何度かあった。衣装の所為もあるが、生徒たちがみんなおとなしくて優等生で今風でない?ことによっているのかもしれない。置農の女子生徒はあんなんじゃないよなって違和感は終始感じた。演出面もあるかな。例えば整列の仕方。あまりに整然と一列だったりコーラスラインだったりして、今の時代にそぐわないと感じた。

でも、面白かった!よくぞ調べた!これもまた、東北大会で評価を聞いても面白い作品だと思った。

コメント (2)
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