しばらく紅大豆本舗の面倒を見ていたので、久しぶりの演劇部だ。やる気いっぱい意欲満々で部活に臨んだ。
ありゃりゃ?ランニング、走ってるの15,6人!どうして?31人も部員いるのに。
理由はすぐにわかった。体調不良を理由に歩いている生徒がなんと10人以上!なんじゃこれは?!それもだらだらと発声練習も適当にして、ただ散歩しているだけ。これはいかん!たしかに腰痛などで走れない者もいる。でも、どう見ても怠けとしか見えない者も1年生を中心に何人も。
ランニングが終わったところで、集合をかけて、激しく檄を飛ばした。大会2週間前でこの態はなんだ!1年生、甘えるな!上級生、下級生をコントロールしろ!歌も演技もさっぱり上達していない。上手くなろうという意識がなければどんだけ稽古したって下手になるばかりだ!歌う時口をしっかり開ける、なんてことはすぐにでもできる。なのに、それをやれない今のムードは怠慢そのものだ、・・・・・。20分ほどとことん叱った。
人間関係のトラブルなどあって、気持ちで乗り切れないでいるってことは十分承知だ。盆明けから休み無しで続く活動に疲労も溜まっている、それも知っている。でも、それを乗り越えて初めて良い作品が生み出されるし、部としてもまとまりを作り出せる。ひいては、一人一人が人間的に成長できる。
そのことを理解させ、納得させること、そして、その壁を超えて行くきっかけを作ること、そこに指導者の役割がある。だから、まずとことん罵倒した。部員の心の中にやる気を覚醒させるためだ。現状を見せつけ、本来あるべき姿を提示した。
しかし、叱咤激励だけでは、今どきの高校生、そうは簡単に気持ちは高まらない。叱られてすぐに態度を切り替えられるなら、こんなにだらけきったりはしない。そこで、説教の後はやる気を高めるパフォーマンスが必要だ。
まずは、ストレッチの後の筋トレをカット。次に発声では学年ごと、男女別に声を出させて各年代の競争心をかき立てる。さらに歌を発声練習に取り込んで、大声で歌わせる。もちろん、曲は『漂流』の中の一番明るく楽しい曲「浦島太郎」だ。感情とか表現とか一切気にせず、ただひたすら大きな声で歌わせる。蛮声を張り上げたことで、気持ちが解放されてくる。そこでさらに歌に合わせて踊らせる。振りなんて関係ない。ともかく動け!なんでもいいから跳ねろ!
次にブレスの難しいアップテンポの曲を選んで、1年生にブレスの感覚を意識させる。しっかり息継ぎしなければ声はでない、ってことを3年生の腹に手を当てさせたりしながら感じ取らせる。次は優しく美しい曲。これも大声で歌う。でも曲のイメージは生かしつつと指示する。そして、最後は一番の難題、アカペラの「詠唱」を歌わせる。心が解き放たれ、声も出るようになっているので、今度は声を一つに合わせることを意識させた。
こんな感じで、気持ちを高揚させつつ、一つ一つの技術的な課題をクリアーさせていく。気持ちが前を向けば、今まで出来なかったことへの挑戦の気持ちも高まる。そんな前がかりの状態で、一つ一つ壁を越えさせていく。
今日はこれが上手く行った。全員の気持ちが一つに固まって来つつあるのを感じた。声も飛躍的に出るようになった。後は、この盛り上がりを持続させつつさらなるテンションの高さに押し上げていくことだ。そして質の高い仕上がりに持って行く。それを舞台にかけ、ふさわしい成果をもらう。これがまた自信を生み出し、新しい向上心を引き出して行く。
スポーツも文化活動もみな同じことだ。監督の顧問の指導者の力量がここで問われる。