永井愛さんの『パートタイマー・秋子』笑った!
笑いをとるコツもいくつかもらえた。
でも、
晴れ晴れとホールを後にした、か?
納得の舞台だったか?
心地よく余韻に浸っているか?
残念ながら。
幕開け、素直に笑いのテクニックに身を任せていたら、あらっ、なんか、登場人物、みんなせこくて卑しい人間ばっかじゃん?
スーパーの従業員、商品は私物化する、その品を返品扱いして売り上げをくすねる、新人いじめに弱い者いじめ、観客それ見て笑ってるし。
それ、笑っちゃっていいの?
古株のヒラどもにいびられ続けるのが、部長をリストラされた男と同じくリスト旦那を持つ奥様。これがパートタイマー?
うっ?上級民はリストラされても同情され、いつの間にかマウントし始める、そこにまた共感の笑い、はぁぁ?
パートタイマーって言ってるけど、非正規のフルタイム雇用じゃん。パートの悲哀、いつ雇止めになるかのって不安とか、勤務時間限定されたり、夜勤押し付けられる不満とか、同一労働同一賃金が保証されな不当とか、・・ないんだよなぁ、この芝居には。
下劣な古参従業員たち、当然正規社員なんだよな、って見てたら、なんと副店長までバイト君だったって。それなら、この見苦しい行動を日常化した店員たちだって、非正規の悲哀に晒されてるはずだよな、店の都合で一方的に解雇されるとか、不本意な配置換え強要されるとか?
なんのなんの、古株さんたち、強いのよ、逞しいのよ、悪賢いのよ、卑劣なのよ!
いや、それが悪辣な本社の対応に対する抵抗ってことなら、やれやれやっちまえ!って声援送りたくなるんだけど、会社は新米店長通してこわごわ改革を迫るだけ、それも、労働者の既得権意識?の前に押しまくられるばかり。
労働者って奴はほっときゃ、勝手放題やるもんだ、特に組合は、って、これ、国労つぶしとか、大阪府市、維新の公務員バッシングと同じ発想じゃねえの。
パートタイマー秋子さんまで、店の商品ちょろまかすし、果ては闇賞与目当てに食品偽装にまで手を染めちまう。うわぁ、笑いで包まれてるからなんとなく見過ごしちまうけど、とんでないことだぜ、救いってもんがまるっきりないじゃないか!そう、従業員たちも最後まで性根は変わらない!
こんなもんよ、人間なんて!って突き放しちまってんのかねぇ、永井愛さん。
ラスト、どうやってその性悪説から這い上がるのか?って注目してたら、
なんと、元部長と元部長夫人二人のパートタイマーの親愛の情の交感、つまり傷の舐め合いで、なんとなくわかったように終わった、って、わからねえよ、そんな結末じゃ。その他の非正規、知らんぷりすんなよ。
て、腹まで立って、いつの間にか笑いもひきつっちまったぜ。周囲はスタンディングまで出る喝采の中、まっ、ご苦労さん、勉強はさせてもらいました、ぱちぱちで終わり。
念のため、その後のアフタートークを聞いてみて、疑問、違和感の原因がわかった。
この作品、20年前のものだったんだ!
そりゃ甘いわ!そりゃゆるゆるだわ!非正規の実態に迫れていないわ!
この20年間の経済不況と政治の退廃の中で、人々の働き方も暮らしぶりも、社会のぎくしゃくもぎりぎりまで追いつめられてるんだから。
秒単位で管理される労働現場、増え続ける非正規、どん底続く氷河世代、下がり続ける給与所得、広がる一方の格差、結婚もできない低賃金、食糧配布に並ぶ列は長くなり、隠れホームレスは増加の一途・・・・
もはや、20年前のリストラ騒動さえ、優雅に感じられる現実が広がっている。
じゃぁ、この悲惨な現実に面と向かって、紡がれる笑いはなんなんだろう?
そりゃ当然、政治家どもの腐敗や堕落を痛撃し、世界で第2位と言われる高額所得者どもをそのお気楽な位置から引きずり落し、そんな世の中の歪んだ仕組みを張り倒す強靭な笑いなんじゃないかね。
なんて、感想書いてる俺って、ひねくれ者なの?かもな。
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