ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

ありきたりの感想だが、舞台はやっぱり役者とセリフ!

2019-12-30 09:38:14 | 劇評

 『魔界転生』を見た。ったって、テレビ放映されたものだ。舞台本番は1年前、そんなのやってたことも知らなかった。3時間以上もの舞台中継、民放BSでよくやっなぁ!って思ったら、日テレ65周年記念事業だってよ。祝賀企画、金に糸目はつけねえぜ、ってわけか。まっ、いいさ、映画とか音楽じゃなく、演劇取り上げてくれたってだけで嬉しいね。1年遅れだって、放映感謝!だぜ。

 山田風太郎のこのとてつもない世界、どう描くのか?これはそそられるぜ。脚本:マキノノゾミ、演出:堤幸彦、で、ホールは当然明治座!そうだろ、そうだろ。で、主役の柳生十兵衛には上川隆也、夜中までかかったって、見通さにゃ。ほら、録画したのを10時過ぎたころから見始めたんでね。そう、民放の映画やドラマはやたらCM入るから、そいつらぶっ飛ばせる録画に限るんだ。

 ともかく、魔界だからねぇ、転生だから、めったやたらと首飛ぶは、天草四郎は宙を舞うは、魂は燃え上がるは、秘法の技は繰り出される。時代背景も、島原の乱やら由比正雪の慶安の変と、血染めのおどろおどろしい史実を下敷きにしている。この説明もせにゃならん。魔物となって蘇るのは、満腔に恨みを充満させた英雄たちだ。3万6千人の信徒、籠城者とともに虐殺された天草四郎、仕官の夢叶わず逝った宮本武蔵、息子十兵衛との角逐を抱える柳生宗矩、大阪城とともに炎上した淀君、さらには荒木又右エ門やら田宮坊太郎など、腕は立ち、術数にたける者たちだ。

 さあ、どうするの?首飛ばしたり、真っ二つに切り裂いたり、転生や消滅を。

 ざくっと言っちまえば、映像の駆使!何枚もの紗幕を吊って、それを下ろしちゃ動画を投影それを頻繁に繰り返して至難のシーンを表現していた。例えば、打ち首じゃ、まず、紗幕奥で役者が首をはねられる。そこは奥に照明が当たっているので、すべて見える。首が飛ぶ直前に奥の照明は消え、前からプロジェクターで事前に作っておいたアニメ動画を重ねる。ほぉら、首切られて宙に飛ぶじゃないか。なるほどなぁ!すべてはこのパターン。それを光と音を組み合わせて、壮絶に描いていた。人間、あるいは魔物が宙を飛ぶのは、言わずとしれたワイヤーアクション!もう、これなんか驚きはないが。

 演出としちゃ、めちゃくちゃな原作、脚本をどう舞台に実現するかで頭をこね回した挙句のスペクタクルシーン、うん、なんとか難題を乗り切ったね、ってところかな。はっきり言って、映像を舞台で活用するのって、もうすでにいろんな作品で駆使されてるからね、そうか、それで解決ね、って程度以上に出ない。

 種明かしされた手品、何度も見るやついないからね。飽きちまったか、って言うと、それが、夜中1時すぎるまでお付き合いしちまった。それは、やっぱり役者とセリフの力だった。淀殿の狂気をお品(物語では秀頼の妻となった九州の土豪の娘、二人の子供が四郎時貞って荒唐無稽な設定だが、魔界あり転生ありなんだから、この程度の脚色は許す)が諭し、天上に帰ることを説得するシーンとか、四郎の無念に思いを馳せつつ打ち破る十兵衛の苦悩とか、坊太郎と柳生門弟との友情とか、後半、続々と演じられる対決果し合いと切り合いの末の和解、どれも見ごたえのあるものだった。幾つもの対決果し合いの場面を一つ一つ印象深く感動的に書き分け、演じ分けさせていた。セリフといい、動きといい、表現といい、すべてがかみ合った見ごたえあるシーンの連続で息をのんだ。

 それと、決闘シーンや乱闘シーンの殺陣、これもあの狭い舞台の中で見事と言える立ち回りで目を見張った。うーん、よっぽど稽古したんだろうな、さすが、プロだぜ。歌舞伎じゃ御馴染みのとんぼ切りなんかもふんだんにあったし、由比正雪の一味が、天空から布をつたって降りて来るシーンなんて、シルクドソレイユ的な遊びがあって、つい、おおっ!いいじゃないか。ミッションインポッシブルにもこんなのあった気がする、なんてね。

 決闘シーンのシリアスで重厚な作りとは別に、コミカルな役作りやセリフや動きのギャグもふんだんに取り込んでいて、最初は、やり過ぎだぁ!ほら、滑ってやがんの!なんてちゃちゃ入れながら見ていたが、いつの間にか、演出と役者の巧みさに引きこまれていた。ここもやっぱり、セリフと役者の力、それを後押しする演出のアイディア、なんだよな。

 舞台の空間てやつは、どう工夫を重ねても、その限定性から逃れられない。すべては見られているし、爆発やら猛火なんてまがい物でしか扱えない。生身の人間を画面のモンタージュでサポートするなんて、映画やテレビならごく初歩的な技術もまず不可能だ。真新しい最新技術で観客の度肝抜く、なんてのは、やはり難しいのさ。

 と、なると、やっぱりセリフだよ。役者の肉体だよ。そこがなんたって、一番の力の源だ。と、すると、外連味ある手練手管にゃ手も足を出ない、アマチュアだって勝負できる?ってことじゃないか。そう、心打つセリフを書こうぜ!観客引き寄せる表現磨こうぜ!

 と、わかっちゃいても、火花とかワイヤーアクションとかやってみたいよなぁ!

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