全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

法政大学でも、こんなことが起きるのか。

2007-05-12 05:50:58 | 気になる 大学研究

 5月6日にasahi.comに出ていたニュースなのだが、法政大学が今年開設した学部ために、来年度開設予定の新学部の設置申請ができなくなった。
 それによれば、今年開設したデザイン工学部の入学者が予定よりも多く(歩留まり率が高く)、文部科学省の設置認可に際する規準に抵触したらしい。記事を詳しく読んでみるとこういうことのようだ。

1.来年新しい学部(スポーツ健康学部)を作るつもりだった。
 この学部は、スポーツ振興と個人の健康作りに貢献できる人材の育成を目標とする。定員(1学年)150人。
2.今年開設のデザイン工学部が思ったよりも人気が出た。
 入学手続き者が大学の予想よりも多かった。入学定員280人の1.37倍の383人が入学。
3.新学部の設置認可の条件・制限にふれてしまった。
 認可には既設の各学部について、直近4年間の平均で入学者が定員の1.3倍未満であることが必要。
 (大学がむやみに入学者を増やし、教育がおろそかになるのを防ぐため)

 既設の各学部の学生数が「入学定員×学年数×1.3」未満でなくてはならない。単年度だと、歩留まりの問題もあるから、4年分(6年分)で見ての条件・制限だろうと思う。規準を大学全体ではなく、(学問の括りとしての)学部を単位とした考え方である。これに問題はないと思う。ただ、デザイン工学部は初年度。1年生が1.3倍を超えている。この結果、新しい学部の開設が(申請しても)ダメとわかって、あきらめたわけだ。

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 記事にも出ていたのだが、開設予定まで1年を切っての延期は「めったにない」(文部科学省)ことだ。受験生対応も問題だ。でも、それより、この学部で新規に雇用することになっていた教学スタッフ(先生たち)の処遇はどうするんだろう。おそらく現任校に今年度末で退職することは申し出ているだろう。承認も得ちゃっている。。。

 僕は、以前ある大学の開設申請資料を見せてもらったことがある。小さな大学の小さな学部だったけど、電話帳何冊分もあった。新学部設置申請資料には、先生たちの履歴、研究歴の資料が事細かにまとめられていた。その中には、現任校の退職承認に関する書類もあった。申請者は、学部の完成年度までのカリキュラムに必要な先生は確保できると証明する義務(?)がある。それが出来て、初めて開設認可申請ができる。開設が一年ずれれば…法政大学の内部の人事異動ならばともかく…よそから移ってくる先生たちの人生が、一年ずつずれることになる。これは大変だぞ。大きなお世話だけど。

 しかし、法政大学は、全国レベルの知名度を持つ、大規模かつ伝統校である。この点異議のある人はあまりいないと思う。入試業務の組織としての経験値だって高いだろう。know-howもあるはずだ。それでも入試の歩留まりを見誤ることもあるんだなぁ~。。。

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 今回、1.3倍という数字が気になった。
 文部科学省はこの数字未満ならば、大学の学部定員オーバーを容認していることにもなるのかな。
 2007年度、大学進学希望者数と入学定員がほぼ同じになった。全入時代のはじまりである。国公立大学はダメなのかもしれないが、私立大学に関しては1.3倍までならば…積極的ではないけれど…文科省は怒らない(見ないふりをする)ことになるのかな。僕は、記事を読む限り、そう見えた。

 私立大学は1人の受験生が複数の大学を併願するのが前提。推薦入試やAO入試で定員の半分近くを確保しても、一般入試をしないわけにはいかない。センター試験受験枠を含めて、合格者を多めに出すのは昔からのことだし、最終的に定員の120パーセント程度が入学しているだろうなあというのは、進路指導をしていれば、経験から、何となくわかっていることだ。
 人気のある大学(簡単に言えば、難易度の高い学校)から順に定員の1.3倍近い学生を入学させていけば、どこかで人がいなくなる理屈である。たとえば、社会科学系(経済経営商業系)学部のランキングなら、早慶上智→MARCH→日東駒専と進むのかな。このあたりまでのクラスが、多めに入学させていけば、どこかから、すぅ~っと学生がいなくなる。全入時代、それは必ずどこかの大学の何かの学部が定員割れすることを意味する。総合大学であれば、全体で定員確保も出来得る。でも、単科大学(または小さい大学)はそれも出来ない。経営に影響が出る。

 いずれにしても、えらい時代になったものだ。


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