今、福岡市美術館で、「横山大観展」が開催されています。9月3日まで。印刷物でよく見る大作ぞろいで、多くの作品に展示期間の限定があります。これだけの大作が一堂に会する機会は、めったにありません。暑さにもかかわらず連日大勢の入場者で、会場も活気があります。
大観の出世作『無我』(東京国立博物館蔵)が6日までの展示のために、早速出かけました。足立美術館にも同名の絵がありますが、今回の童の表情の方が素晴らしいと思いました。
心に残った絵は、墨の濃淡だけで四季の山を描いた『山四趣』です。春の明るさ、夏山の木々の深さ、少し紅葉しかかった秋の山、墨で描いた見事な雪山。線を一切省いた朦朧体と呼ばれる画風で、そのどれにも大気が見事に表現されています。華やかな色彩の日本画もよかったけど、墨絵には日本の精神性が込められているようで素晴らしいものでした。大倉集古館蔵ですが、さすがいいものを持っていると思います。
山あいに小さく描き込まれた鳥の群れ。小筆の先で三点ぐらいの表現なのに、宙に舞う鳥の姿が実によく描かれて、まるで空を仰いで鳥の群れを見ているような錯覚を起こしました。天才の素晴らしさは、こんな小さいところにもさりげなく出るのでしょうか。
展示予定表をつぶさに見て、また出かけるつもりです。