1985年のショパンコンクールで、圧倒的な演奏で優勝したスタニスラフ・ブーニン。日本でもブーニン旋風が吹き荒れました。
当時、その旋風に乗れなかった私は、まさかここにきて生ブーニンさんに会えるとは思ってもいませんでした。
その後旧ソ連から母親と共に西ドイツへ必死の亡命、日本人女性と結婚します。
しかしピアニストに致命的な肩の骨の石灰化という難しい病気にかかります。更にそのリハビリ中に足の骨折、足の壊死、困難な手術……と心身に深い傷を負い一線から退きます。
そして妻栄子さんの強力なサポートで回復に向かいます。10年の時を経て、療養生活と復活に向けたドキュメンタリーがNHKで放送され大きな話題を呼びました。
そして満を持して、今年から来年にかけて10か所でリサイタルが開かれることになりました。
当時、その旋風に乗れなかった私は、まさかここにきて生ブーニンさんに会えるとは思ってもいませんでした。
チケット発売日はパソコンの前にスタンバイして、やっと希望の席をとることができました。案の定、チケットは即完売です。
今日のリサイタルは、華々しいショパコンの記憶があるだけに、最初の1音に胸がどきどきしました!
しかし10年の空白はヴィルトゥーゾは影を潜め、緩やかな曲ばかりになっていました。
左手がやはりコントロールが効きにくいのか、平板な伴奏になって繊細さときらめきを感じ取れませんでした。というよりは、ピアノの弾き方を変えたというのがいいかもしれません。
手術で8cm短くなった左足には超厚底の靴。ペダルの感覚も取りにくいでしょう。
しかしピアニストには考えられない10年の空白を越えてステージの復活を果たしたことに大きな意義があるのでしょう。
ファンはブーニンさんを忘れず、この日が来ることをずーっと待ち続けていたようです。
10年の空白を越えてステージに戻ったブーニンさんに向ける、満場の観客の眼差しはとても温かいものでした。
この応援とピアノ愛がブーニンさんの回復を更にいい方向に導いてくれることを信じています。