「なつぞら」が終わり、ウッチャンの「来週に続けよぉ」と進んできたストーリーと豪華なキャストの顔が突然消えて「なつぞらロス」の感じ。
文化大革命が進む70年代、人民解放軍の将兵の士気を高める役割を持っているのが文芸工作団です。若い団員の初恋や片想いが、極限の状況の中で交錯する切ないラブストーリーです。
ストーリーを貫いていた開拓魂、私の中では開高健の『ロビンソンの末裔』が常に根底にありました。
ドラマ進行中に、悲惨な京アニ事件が起きたり、東京では「高畑勲展」が、福岡では「富野由悠季の世界」展が開催されたり、アニメの世界が特にクローズアップされた感があります。
「なつぞら」のオープニグ・クレジットにも名前が出ていましたが、アニメーション時代考証に携わった小田部羊一氏が日経新聞に投稿されていました。
ドラマの「なつ」は羊一氏の妻・奥山玲子さんがモデルということでもう亡くなられています。
東映動画を去った高畑勲、宮崎駿、小田部羊一氏は、テレビシリーズ「アルプスの少女ハイジ」製作のためにスイスのロケハンに出かけます。まだ海外旅行も珍しい時代です。
イメージの中の美しいスイスと違って、そこで見た泥臭い現実生活に親近感を覚え、ハイジのお下げ髪をざん切り髪に変え、ほっぺを真ん丸にデザインしたのは小山田氏でした。
彼らは世界に通用する作品を目指し、きちんと考えて表現する、映画は集団製作であることを学んでいきました。
その姿勢はドラマの中でもずっと生きており、紆余曲折の製作場面に演出されていたと思います。
ドラマの中の「大草原の少女ソラ」は「アルプスの少女ハイジ」を念頭に描かれたものでしょう。
小山田氏は芸大卒、高畑氏は東大卒でドラマでは坂場さんが、染谷将太が斬新な提案を次々に出していく宮崎駿役さんかな。それぞれの経験や経歴をうまく寄り合わせて見事な人物相関図が出来上がっていると思いました。
私の中で最高の演技賞は「じいちゃん」。寡黙で、表情や後ろ姿で心の内を表現する草刈さんの演技は真に迫っており、草刈=大樹からしばらく抜け出せないでいます。
今まで連続ドラマが半年続けば、どこかで中弛みが出てきて時間稼ぎかなと思うこともありましたが、「なつぞら」にはまったくそれを感じませんでした。
私も使っていた花柄のホーロー鍋、ストライプのタイトなブラウス、チュニック丈のワンピース、黒電話のカバーなど、昭和40~50年代の時代考証が丁寧になされていたのも共感と親しみを感じました。
昭和の時代を生き抜いた複数の人物の人生模様が丁寧に描き出され、それも現代史。心に残る秀作の100作目だったと思います。
お昼に中国映画 「芳華」を見てきました。福岡市総合図書館のシネラです。行き帰りのバスの中でブログの下書き。スマホばかりで投稿するので耐用年数が短くなるだろうな・・・。
文化大革命が進む70年代、人民解放軍の将兵の士気を高める役割を持っているのが文芸工作団です。若い団員の初恋や片想いが、極限の状況の中で交錯する切ないラブストーリーです。
団員の中には、文化人の父親を粛清されたことを秘密にしなければならない者、誤解により歌劇団から追放される若者、文化大革命が終演する大学入学制度が復活して去っていく者、中越戦争の前線に送られ片腕を失い英雄として生きる者など、若さにきらめきながらも時代に翻弄され続けます。
すべて手拍子と号令で一糸乱れることのない歌舞団は、まさにファミリーでもあり青春の輝きがありました。
文芸工作団の心に染み渡る旋律の音楽の美しさ、中国特有の現代バレーの躍動感と華麗さには規律の美しさがありました。
それから30数年後、遠く散り散になってしまった元団員達がそれぞれの人間としての生き方を見つめて悩むのはどこの国でも変わりません。今の生活の満足度を何を基準にして計るのか・・・。
どんな時代でも、どんな体制であっても精いっぱい生きる姿がありました。